米国がビットコインを準備金化へ：テキサス・ニューハンプシャー先導、連邦大統領令で20万BTCを管理

近年、ビットコインを国家や州の準備金として位置づける動きが世界的に注目を集めています。特にアメリカ合衆国では、2025年に入り複数の州や連邦レベルで「ビットコイン準備金法案」が提出・成立し、ビットコインを公的資産の一部として保有・管理する制度が具体化しつつあります。本記事では、ビットコイン準備金法案の概要、アメリカ各州の動向、連邦政府の取り組み、そしてこの法案がもたらす可能性について詳しく解説します。

ビットコイン準備金法案の概要

ビットコイン準備金法案とは、国家や地方自治体が財政の安定化や資産分散の一環として、ビットコインを準備資産の一部に組み入れることを認める法律や政策のことを指します。従来、準備金は主に金や外貨で構成されてきましたが、ビットコインのデジタル資産としての特性やインフレヘッジ効果が注目され、これを新たな準備資産として加える動きが活発化しています。

この法案の主な目的は、ビットコインを国家や州の資産として正式に保有し、その価値を財政の安定化やリスクヘッジに活用することにあります。法案では、ビットコインの取得、保管、管理に関する厳格なルールや透明性の確保が求められており、例えば州の会計監査官が管理責任を担うケースが多いです。

アメリカにおけるビットコイン準備金法案の動向

アメリカでは2025年に入り、複数の州でビットコイン準備金法案が提出・成立しています。特に注目されるのはテキサス州とニューハンプシャー州の動きです。

テキサス州では2025年5月に「戦略的ビットコイン準備金（SB 21）」法案が州議会で可決され、州の会計監査官がビットコインを保有・管理することが可能となりました。この法案により、州の準備金の一部としてビットコインを組み入れ、州民からの寄付も正式に受け入れられる体制が整備されています。
ニューハンプシャー州は2025年5月に全米で初めて関連法案を成立させ、州レベルでビットコインを公的資産として扱う先駆けとなりました。
ミシガン州では、州財務省が準備金の最大10%をビットコインやその他の暗号資産に投資することを認める法案（HB 4807）が審議されており、戦略的なビットコイン準備の確立を目指しています。

これらの州の動きは、ビットコインを単なる投機対象ではなく、財政戦略の一環として公的に認める重要なステップとなっています。

連邦政府の取り組みと大統領令

連邦レベルでもビットコイン準備金に関する動きが加速しています。2025年3月、当時のドナルド・トランプ大統領は「戦略的ビットコイン準備金（Strategic Bitcoin Reserve）」の設置を謳う大統領令に署名し、国家資産としてビットコインを正式に組み入れる方針を示しました。

この大統領令に基づき、米国政府は押収資産を活用して約20万ビットコイン（数十億ドル相当）を管理しており、これが国家準備資産の一部として位置づけられています。また、連邦議会上下両院では「2025年ビットコイン法」と呼ばれる法案が提出され、国家的なビットコイン準備金の設立を求める動きもあります。

さらに、連邦下院は財務省に対し、ビットコイン準備金の保管、サイバーセキュリティ、会計基準などの重要分野に関する調査を指示しており、制度の安全性と透明性の確保に注力しています。

ビットコイン準備金法案の意義と期待される効果

ビットコイン準備金法案の導入は、以下のようなポジティブな効果が期待されています。

資産の多様化とリスクヘッジ
ビットコインは金と同様にインフレヘッジの役割を果たす可能性があり、準備資産に加えることで財政の安定性を高めることができます。
デジタル経済への適応
デジタル資産を公的資産として認めることで、国家や州の財政運営が現代の経済環境に適応しやすくなります。
透明性と信頼性の向上
法案によりビットコインの保管・管理に関する厳格なルールが設けられ、透明性が確保されることで、国民や市場の信頼を得やすくなります。
公的機関のビットコイン需要の増加
国家や州がビットコインを保有することで、公的機関による需要が増え、市場の成熟や流動性向上に寄与します。

今後の展望と課題

ビットコイン準備金法案はまだ新しい取り組みであり、今後の展開には注目が集まっています。多くの州や連邦政府が制度設計やリスク管理の枠組みを模索している段階であり、以下の点が課題として挙げられます。

価格変動リスクの管理
ビットコインは価格変動が激しいため、準備金としての安定性を確保するためのリスク管理が重要です。
セキュリティ対策の強化
デジタル資産の保管には高度なセキュリティが求められ、ハッキングや不正アクセスの防止が不可欠です。
法的・規制面の整備
ビットコインの公的資産化に伴い、関連する法律や規制の整備が必要であり、州ごとに異なる対応が課題となる可能性があります。

これらの課題に対応しつつ、ビットコイン準備金法案は公的財政の新たな柱として期待されています。

ビットコイン準備金法案に関する主要な州別動向まとめ

州名	法案名・内容	特徴
テキサス州	SB 21（戦略的ビットコイン準備金法案）	州会計監査官がビットコインを保有・管理。州民からの寄付も受け入れ可能。
ニューハンプシャー州	関連法案成立（2025年5月）	全米初の州レベルでビットコインを公的資産として認定。
ミシガン州	HB 4807	州財務省が準備金の最大10%をビットコインや暗号資産に投資可能。
ワシントン州	SBR設立検討中	2025年末までに戦略的ビットコイン準備金の正式設立を目指す。

ビットコイン準備金法案が示す未来の財政戦略

ビットコイン準備金法案は、単なる仮想通貨の導入を超え、国家や地方自治体の財政運営に新たな選択肢を提供しています。デジタル資産を公的資産として認めることで、経済のデジタル化に対応しつつ、資産の多様化やインフレ対策を強化することが可能となります。

また、これらの法案は透明性やセキュリティの確保を前提としており、公的機関のビットコイン保有が市場の信頼性向上や流動性拡大に寄与することも期待されています。今後も各州や連邦政府の動向に注目が集まるでしょう。

まとめ

ビットコイン準備金法案は、国家や州がビットコインを正式な準備資産として組み入れることを可能にする法律であり、2025年にアメリカを中心に急速に進展しています。テキサス州やニューハンプシャー州など複数の州で法案が成立し、連邦政府も大統領令や議会での法案提出を通じて制度化を推進しています。これにより、ビットコインは財政の安定化や資産多様化の手段として期待されており、透明性やセキュリティの確保を前提に公的機関の資産運用に新たな可能性をもたらしています。