暗号資産税制がここまで変わる：2025〜2026年改正で個人は約20％へ、法人の期末評価廃止をわかりやすく解説

近年、暗号資産（仮想通貨）の普及に伴い、その税制も大きな注目を集めています。日本における暗号資産の税制は、2020年代に入り急速に変化しつつあり、特に2025年から2026年にかけての税制改正が予定されています。本記事では、現行の暗号資産税制の概要から、2025年・2026年に予定されている改正内容、そしてそれらが個人や法人に与える影響について詳しく解説します。

1. 現行の暗号資産税制の基本構造

現在、日本の暗号資産取引で得た利益は「雑所得」として扱われ、所得税と住民税の総合課税の対象となっています。具体的には、給与所得など他の所得と合算され、所得額に応じて最大55％（所得税45％＋住民税10％）の税率が適用されます。このため、特に高所得者にとっては暗号資産の利益に対する税負担が非常に重いものとなっています。

また、現行制度では暗号資産の損失は他の所得と損益通算ができず、損失繰越も認められていません。さらに、複数回にわたる売買や送金がある場合の利益計算は複雑で、税務申告の負担が大きいのも特徴です。

2. 2025年の税制改正のポイント

2025年の税制改正では、主に法人向けの暗号資産に関する課税ルールが見直されます。具体的には、自社が発行した暗号資産（トークン）について、期末評価課税が不要となる点が大きな変更です。これにより、含み益があっても譲渡（売却）を行うまでは課税されず、法人の税務負担が軽減されることになります。

一方、個人の暗号資産取引に関する課税ルールは現行の総合課税のまま維持される予定です。つまり、個人投資家は引き続き最大55％の税率が適用され、損益通算や損失繰越も認められません。

3. 2026年からの申告分離課税導入の見通し

2026年度の税制改正では、暗号資産の個人課税に大きな変更が予定されています。政府・与党は、暗号資産の所得を株式や投資信託と同様に一律20％程度の申告分離課税に移行する方向で調整を進めています。これにより、所得に関わらず一定の税率で課税されるため、高所得者の税負担が大幅に軽減される見込みです。

また、申告分離課税の導入に伴い、損失繰越控除が3年間認められることも提案されています。これにより、暗号資産取引で損失が出た場合でも翌年以降の利益と相殺できるため、税務上のメリットが増加します。

さらに、暗号資産同士の交換による損益を非課税とする案も検討されており、これが実現すれば取引の柔軟性が高まることが期待されます。

4. 申告分離課税のメリットと注意点

項目	現行制度（～2025年）	改正後（2026年～予定）
課税方式	総合課税（雑所得）	申告分離課税
税率	最大55％（所得税45％＋住民税10％）	一律約20.315％（所得税15.315％＋住民税5％＋復興特別所得税）
損失繰越	不可	3年間可能
損益通算	不可（他の所得と不可）	不可（分離課税のため）
NISA適用	不可	当面不可

申告分離課税の導入により、税率が大幅に引き下げられることで、暗号資産取引の税負担が軽減されることは大きなメリットです。また、損失繰越が認められることで、税務計算の柔軟性も向上します。ただし、分離課税のため他の所得との損益通算はできません。

5. 金融商品取引法（金融商品取引法）改正との連携

暗号資産税制の改正は、金融商品取引法の改正とも連動しています。2026年の通常国会で提出予定の改正案には、暗号資産発行者に対する情報開示義務の導入やインサイダー取引の禁止など、投資家保護を強化する規定が盛り込まれる見込みです。

これらの規制強化は、暗号資産市場の透明性と信頼性を高めることを目的としており、税制改正と合わせて国内の暗号資産市場の健全な発展に寄与すると期待されています。

6. 個人投資家が知っておくべきポイント

2025年までは現行の総合課税制度が適用され、最大55％の税率がかかる。
2026年以降は申告分離課税が導入され、一律約20％の税率となる見込み。
損失繰越が3年間認められ、税務上のメリットが増加する。
暗号資産同士の交換による損益は非課税となる可能性がある。
税制改正はまだ最終決定ではなく、2025年末の税制改正大綱や2026年の国会審議を経て確定する。

7. 法人における暗号資産税制の変化

法人に関しては、2025年の税制改正で自社発行の暗号資産に対する期末評価課税が廃止されます。これにより、含み益があっても売却しない限り課税されないため、法人の資産管理や会計処理が簡素化され、税務負担の軽減につながります。

ただし、譲渡や売却を行った場合は課税対象となるため、法人は取引タイミングの戦略的な検討が重要となります。

8. 今後の展望と市場への影響

暗号資産税制の改正は、税負担の軽減と税務処理の簡素化を通じて、より多くの個人・法人が安心して暗号資産取引に参加できる環境を整えることを目指しています。特に申告分離課税の導入は、税制面での公平性と透明性を高め、国内の暗号資産市場の国際競争力強化に寄与すると期待されています。

また、金融商品取引法の改正と連携した規制強化により、投資家保護が強化されることで、暗号資産市場の信頼性向上にもつながるでしょう。これらの動きは、暗号資産を活用した新たな金融商品やサービスの普及促進にも寄与すると考えられます。

まとめ

日本の暗号資産税制は、2025年から2026年にかけて大きな変革期を迎えています。法人向けには期末評価課税の廃止、個人向けには申告分離課税の導入と税率引き下げ、損失繰越の認可などが予定されており、これにより税負担の軽減と税務処理の簡素化が期待されます。さらに、金融商品取引法の改正による投資家保護の強化も進んでおり、これらの制度改正は暗号資産市場の健全な発展に寄与するものです。