ビットコインETFとは何か
ビットコインETF(上場投資信託)は、ビットコインを運用対象とする投資信託で、株式と同じように証券取引所で取引できる金融商品です。従来の仮想通貨取引所での直接購入とは異なり、一般的な証券口座を通じて投資できるという特徴があります。
ビットコインETFには大きく分けて2つの種類があります。1つは先物契約に基づく先物ETFで、もう1つはビットコインそのものを直接保有する現物ETFです。現物ETFは、実際のビットコインを裏付け資産として保有しているため、より直接的な投資方法として注目されています。
ETFの形式で投資することにより、機関投資家から個人投資家まで、より安全で透明性の高い方法でビットコインへのアクセスが可能になります。また、従来の仮想通貨取引所を利用する場合と比べて、セキュリティ面での懸念が軽減されるという利点もあります。
米国でのビットコインETF承認の歴史
先物ETFから現物ETFへの転換
米国におけるビットコインETFの歴史は、先物ETFから始まりました。2021年には、ビットコイン先物に基づくETFが承認され、取引が開始されました。しかし、米国証券取引委員会(SEC)は、ビットコイン現物ETFについては長年にわたって承認を見送ってきました。
SECが現物ETFの承認を拒否してきた理由は、仮想通貨市場の未成熟さ、価格変動リスクの高さ、相場操縦や詐欺行為を防ぐための要件が不十分であることなどが挙げられていました。このため、ビットコイン現物ETFの承認を求める声は高まっていましたが、実現には至りませんでした。
2024年1月の歴史的な承認
転機となったのは2024年1月です。グレイスケール社という大手仮想通貨運用企業が、SECに対してビットコイン現物ETFを承認しないことを不服とする裁判を起こし、これに勝訴しました。この判決により、SECの姿勢に大きな変化がもたらされました。
2024年1月10日から11日にかけて、SECは歴史的な決定を下しました。この日、米国の複数の大手金融機関が申請していたビットコイン現物ETFが、一度に11本も承認されたのです。これは、ビットコイン現物ETFの承認を求める市場の声が、ついに実現した瞬間でした。
承認されたETFには、大手資産運用会社であるブラックロック、ヴァンガード、ステートストリートなどが発行するものが含まれていました。これにより、機関投資家だけでなく、一般的な投資家もより容易にビットコインへの投資が可能になりました。
2024年11月のオプション取引開始
ビットコイン現物ETFの承認から約10ヶ月後の2024年11月には、さらに新たな展開がありました。米国でビットコイン現物ETFのオプション取引が開始されたのです。これにより、投資家はより多様な投資戦略を実行できるようになりました。
2025年の規制環境の大きな変化
SECによる包括上場基準の導入
2025年9月、米国証券取引委員会は暗号資産ETFの審査ルールに大きな変更を加えました。これまでのような個別の上場承認手続きではなく、「包括上場基準(Generic Listing Standards)」という新しい制度を正式に導入したのです。
この新制度の最大の特徴は、特定の条件を満たす暗号資産ETFであれば、上場取引所がSECに個別審査を申請せずとも、既存ルールに基づいて迅速に上場できるようになったという点です。これは、暗号資産ETF市場に対するSECの規制姿勢が、大きく前進したことを意味しています。
この制度変更により、SECによる審査期間は従来の240日から75日に大幅に短縮されることになりました。これにより、新しい暗号資産ETFの上場がより迅速に進むようになり、市場の拡大が加速することが期待されています。
2025年9月以降の新規ETF上場
新しい包括上場基準の導入により、2025年10月28日から29日にかけて、米国の証券取引所に4銘柄の暗号資産現物ETFが新たに上場されました。これは、新制度の効果が早速表れた事例です。
2025年1月から3月にかけては、ビットコインやイーサリアムに続く新たな暗号資産のETF申請が急増しました。ソラナ(SOL)、ライトコイン(LTC)、リップル(XRP)などの現物型ETFが審査段階にあり、これらが承認されれば、機関投資家にとって複数の暗号資産へのアクセスが格段に容易になることが期待されています。
日本でのビットコインETF承認状況
現在の承認状況
残念ながら、2025年11月現在、日本国内ではビットコインETFは承認されていません。日本国内で新しくビットコインETFを組成することは認められていないため、国内の証券会社を通じて購入することはできない状況が続いています。
米国ではビットコイン現物ETFが2024年1月に承認され、その後も新しい暗号資産ETFが次々と上場されているのに対し、日本の規制環境はまだこの段階に至っていません。この差は、日本と米国の規制当局の暗号資産に対する姿勢の違いを反映しています。
日本での今後の展望
日本でビットコインETFが承認される時期は、現在のところ未定です。金融庁をはじめとする日本の規制当局の動向を注視する必要があります。ただし、米国での成功事例や市場の拡大を受けて、日本でも承認に向けた検討が進む可能性は十分にあります。
日本の投資家がビットコインへの投資を希望する場合、現在のところはビットコイン関連株を購入することで、暗号資産市場に間接的に投資することができます。これは、直接的なビットコイン投資ではありませんが、暗号資産市場の成長の恩恵を受ける方法として活用されています。
ビットコインETFの利点と特徴
投資家にとってのメリット
ビットコインETFを通じた投資には、複数のメリットがあります。まず、従来の仮想通貨取引所での直接購入と比べて、セキュリティが強化されています。ETFは規制された金融機関によって管理されるため、ハッキングや詐欺のリスクが大幅に軽減されます。
次に、一般的な証券口座を通じて投資できるという利便性があります。既に株式投資をしている投資家であれば、新たに仮想通貨取引所の口座を開設する必要がなく、同じプラットフォームでビットコインへの投資が可能になります。
さらに、ETFの形式により、より多くの機関投資家がビットコイン市場に参入しやすくなりました。これにより、市場の流動性が向上し、より安定した価格形成が期待されています。
規制リスクの軽減
ビットコインETFは、規制当局の厳格な監視下にあります。これにより、相場操縦や詐欺行為のリスクが軽減されます。また、ETFを発行する金融機関は、投資家保護に関する厳しい要件を満たす必要があるため、投資家の利益がより確実に守られます。
米国でのビットコインETFの市場規模と影響
資金流入の規模
ビットコインとイーサリアムの現物ETFへの年間の資金流入量は、約770億円にも上るとの見通しが立てられています。この数字は、ビットコインETFが市場にもたらした影響の大きさを示しています。
これだけの規模の資金がビットコイン市場に流入することにより、仮想通貨市場全体での価格上昇が期待されています。また、市場の成熟度がより高まることにより、より安定した市場環境が形成されることが期待されています。
機関投資家の参入
ビットコイン現物ETFの承認により、従来はビットコイン市場に参入していなかった大手機関投資家が、市場に参入するようになりました。これにより、市場の流動性が大幅に向上し、より効率的な価格形成が実現されています。
機関投資家の参入は、ビットコイン市場の信頼性向上にも貢献しています。大手金融機関がビットコインETFを発行・管理することにより、ビットコインという資産クラスの正当性が市場で認識されるようになりました。
他の暗号資産ETFの動向
イーサリアムETFの承認
ビットコイン現物ETFの承認に続いて、イーサリアムの現物ETFも米国で承認されました。イーサリアムは、ビットコインに次ぐ時価総額を持つ暗号資産であり、その現物ETFの承認は市場にとって大きな意味を持っています。
ただし、米国ではまだイーサリアムのETFが承認されていない段階もありましたが、香港ではすでに承認されていました。このように、地域によって規制環境が異なることも、暗号資産市場の特徴の一つです。
その他の暗号資産ETFの申請状況
2025年3月現在、ソラナ(SOL)、ライトコイン(LTC)、リップル(XRP)などの現物型ETFが審査段階にあります。これらが承認されれば、機関投資家にとって複数の暗号資産へのアクセスが格段に容易になります。
新しい包括上場基準の導入により、これらのETFの審査期間が大幅に短縮されることが期待されています。市場からは、DTCC登録まで完了している申請に関しては、近日中の承認発表を期待する声も聞かれています。
ビットコインETF承認プロセスの詳細
承認までの長い道のり
ビットコイン現物ETFの承認は、最初の申請から8年以上を経てようやく実現したものです。この長い期間は、SECが暗号資産市場に対して慎重な姿勢を取っていたことを示しています。
SECは、投資家保護を最優先とする立場から、暗号資産市場が十分に成熟し、規制要件を満たすまで、現物ETFの承認を見送ってきました。この慎重な姿勢は、投資家の利益を守るためのものでした。
DTCC登録から正式承認までの期間
ブラックロックのビットコインETF(IBTC)の事例では、DTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)に登録されてから、正式承認を受けるまでに約2.5ヶ月の期間がありました。このように、DTCC登録から正式承認までには、一定の期間が必要とされています。
新しい包括上場基準の導入により、この期間がさらに短縮されることが期待されています。これにより、新しいETFの上場がより迅速に進むようになるでしょう。
投資家にとっての実践的な情報
米国でのビットコインETF購入方法
米国の投資家は、一般的な証券口座を通じてビットコインETFを購入することができます。代表的なビットコインETFのティッカーシンボルには、ProShares社が販売する「BITO」などがあります。これらのETFは、米国の主要な証券取引所で取引されています。
米国でのビットコインETF市場は、2024年1月の承認以来、急速に成長しています。多くの投資家がこの新しい投資機会を活用し、ビットコインへのエクスポージャーを増やしています。
日本の投資家の選択肢
日本国内ではビットコインETFが購入できないため、日本の投資家は現在のところ、ビットコイン関連株を購入することで、暗号資産市場に間接的に投資することができます。これは、ビットコイン企業の株式や、ビットコイン採掘企業の株式などが該当します。
また、海外の証券口座を開設することにより、米国のビットコインETFを購入することも可能です。ただし、この場合は、為替リスクや税務上の複雑性が生じる可能性があるため、事前に十分な情報収集が必要です。
規制環境の今後の展望
米国での規制の方向性
米国のSECは、2025年9月の包括上場基準の導入により、暗号資産ETFに対する規制姿勢を大きく転換させました。これは、イノベーションと投資家保護のバランスを重視する新たな規制アプローチの表れです。
今後、米国では、より多くの暗号資産ETFが承認される可能性が高いと考えられます。新しい基準により、審査期間が短縮されたことで、市場の拡大がさらに加速することが期待されています。
日本での規制の可能性
日本の金融庁も、米国での動向を注視していると考えられます。米国でのビットコインETF市場の成功と、その後の規制環境の改善を受けて、日本でも同様の動きが進む可能性があります。
ただし、日本の規制当局は、米国以上に慎重な姿勢を取る傾向があるため、承認までにはさらに時間がかかる可能性も考えられます。今後の金融庁の動向に注目することが重要です。
ビットコインETFと暗号資産市場の関係
市場の成熟度向上
ビットコインETFの承認と普及により、暗号資産市場全体の成熟度が向上しています。機関投資家の参入により、市場の流動性が向上し、より安定した価格形成が実現されています。
また、規制当局による監視が強化されることにより、市場の透明性が向上し、投資家の信頼が増すようになっています。これらの要因が組み合わさることにより、暗号資産市場はより健全な発展を遂げることが期待されています。
他の金融商品との統合
ビットコインETFの登場により、暗号資産は従来の金融商品とより密接に統合されるようになりました。投資家は、株式や債券と同じプラットフォームでビットコインに投資できるようになり、ポートフォリオの多様化がより容易になっています。
この統合により、暗号資産市場は、従来の金融市場の一部として認識されるようになりました。これは、暗号資産の正当性が市場で認識されたことを意味しており、市場の長期的な発展にとって重要な意味を持っています。
まとめ
ビットコインETFの承認は、米国では2024年1月に実現し、その後の規制環境の改善により、市場は急速に拡大しています。2025年9月のSECによる包括上場基準の導入により、新しい暗号資産ETFの上場がさらに加速することが期待されています。一方、日本ではまだビットコインETFが承認されていませんが、米国での成功事例を受けて、今後の動向に注目が集まっています。ビットコインETFは、暗号資産市場の成熟度向上と、機関投資家の参入を促進する重要な金融商品として、今後も市場の中心的な役割を果たしていくと考えられます。
ビットコインETF、承認はいつ? 米国の2024年歴史的承認と2025年の規制変化、日本の現状を一挙解説をまとめました
ビットコインETFの承認時期は、地域によって大きく異なります。米国では2024年1月10日から11日にかけてビットコイン現物ETFが承認され、その後も新しい暗号資産ETFが次々と上場されています。2025年9月には、SECが包括上場基準を導入し、審査期間を240日から75日に短縮することで、さらなる市場の拡大を促進しています。一方、日本では2025年11月現在、ビットコインETFはまだ承認されていません。日本での承認時期は未定ですが、米国での成功事例と規制環境の改善を受けて、今後の金融庁の動向に注目が集まっています。投資家は、各地域の規制環境を理解した上で、適切な投資判断を行うことが重要です。



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