暗号資産の税率が2026年に大改革：最大55%から一律20.315%へ ── 申告分離課税・損失繰越のポイントと注意点

近年、暗号資産（仮想通貨）への関心が高まる中で、その税制についても注目が集まっています。特に2026年から予定されている税制改正により、暗号資産の税率が大きく変化することが発表され、投資家や一般ユーザーにとって大きな影響が予想されています。この記事では、暗号資産の税率に関する現行制度と今後の改正内容、その背景やメリット、そして海外との比較などを詳しく解説します。暗号資産の取引を検討している方や、既に取引を行っている方にとって、役立つ情報を提供します。

暗号資産の現行税率と課税方式

現在、日本における暗号資産の取引で得た利益は、「雑所得」として扱われており、給与所得やその他の所得と合算して「総合課税」の対象となっています。つまり、暗号資産の利益は、他の所得と合算されたうえで累進課税が適用されるのです。

累進課税とは、所得金額が高くなるほど税率も上がる仕組みです。具体的には、課税所得金額に応じて5%から45%の所得税率が適用され、それに加えて10%の住民税率が加算されます。そのため、暗号資産の利益が大きい場合、最大で55%の税率が適用されることがあります。

たとえば、年間の給与所得が1,000万円で、暗号資産の利益が500万円あった場合、合計所得金額は1,500万円となり、税率は33%（所得税）＋10%（住民税）＝43%となります。さらに、復興特別所得税が加算されると、実際の税率は45%近くまで上昇する可能性があります。

このように、現行制度では暗号資産の利益が大きいほど、税負担が重くなる傾向があります。また、暗号資産の損失は他の所得と相殺することはできず、損失繰越も認められていません。つまり、利益が出た年は税金がかかり、損失が出た年は税金の還付や繰越ができないという仕組みになっています。

2026年からの税制改正内容

2026年から予定されている税制改正により、暗号資産の課税方式が大きく変わります。具体的には、「申告分離課税」が導入され、税率が一律20.315%に引き下げられる予定です。この改正により、暗号資産の税負担が大幅に軽減されると見られています。

申告分離課税とは、暗号資産の利益を他の所得と分けて課税する方式です。つまり、給与所得やその他の所得と合算せず、暗号資産の利益だけに対して税率が適用されます。税率は所得税15.315%（所得税15%＋復興特別所得税0.315%）と住民税5%を合わせて、一律20.315%となります。

この改正により、暗号資産の利益が大きい場合でも、税率は20.315%で固定されるため、現行制度よりも税負担が軽減されます。たとえば、年間の給与所得が1,000万円で、暗号資産の利益が500万円あった場合、現行制度では税率が43%～45%程度でしたが、改正後は20.315%で固定されます。これにより、税金の支払い額が大幅に減少する可能性があります。

また、改正後は損失繰越も3年間認められるようになります。つまり、暗号資産の取引で損失が出た場合、その損失を翌年以降3年間繰り越して、利益と相殺できるようになります。これにより、税負担の平準化が可能になります。

ただし、NISA（少額投資非課税制度）の適用は当面見込まれていません。NISAは株式や投資信託などの金融商品に対して、一定額までの利益が非課税になる制度ですが、暗号資産については現時点では適用されない予定です。

改正後の税率と現行制度の比較

以下に、現行制度と改正後の税率、課税方式、損失繰越の有無などを比較した表を示します。

項目	現行制度（～2025年）	改正後（2026年～予定）
課税方式	総合課税（雑所得）	申告分離課税
税率	最大55%（所得税45%＋住民税10%）	一律20.315%（所得税15.315%＋住民税5%）
損失繰越	不可	3年間可能
NISA適用	不可	不可（当面）

この表からもわかるように、改正後は税率が大幅に引き下げられ、損失繰越も可能になります。これにより、暗号資産の税負担が軽減され、投資環境が改善されることが期待されています。

海外の暗号資産税制との比較

日本以外の主要国における暗号資産の税制も、参考になります。以下に、主な国の税率や損失繰越の有無などを比較した表を示します。

国	税率	損失繰越	特徴
日本（現行）	最大55%	不可	総合課税（雑所得）
日本（改正後）	20.315%	3年間可能	申告分離課税
アメリカ	0～37%	可能	保有期間による税率差
イギリス	10～20%	可能	年間非課税枠あり
ドイツ	0～45%	可能	1年保有期間で非課税
シンガポール	0～22%	可能	非居住者向け優遇

この表からもわかるように、日本は改正後、税率が20.315%と比較的低く、損失繰越も可能になります。アメリカやイギリス、ドイツなどでも損失繰越が認められており、税率も日本と同程度かそれ以下です。シンガポールは非居住者向けに優遇措置があり、税率も低くなっています。

日本は改正後、海外と比べても税負担が軽減され、投資環境が改善されることが期待されています。

税制改正の背景と目的

なぜ、暗号資産の税制が改正されるのでしょうか。その背景には、暗号資産市場の拡大や、投資家の税負担の軽減、そして国際競争力の維持があります。

近年、暗号資産市場は急速に拡大しており、日本でも多くの投資家が暗号資産に注目しています。しかし、現行制度では税率が高く、損失繰越も認められていないため、投資家の税負担が重く、投資環境が不利な状況でした。

また、海外では暗号資産の税制が比較的緩和されており、日本との格差が生じていました。これにより、日本の投資家が海外の取引所に移行するケースも増えていました。そのため、日本も税制を改正し、投資環境を改善することで、国際競争力を維持する必要がありました。

さらに、暗号資産市場の健全な発展を促進するためにも、税制の見直しが必要とされています。税率の引き下げや損失繰越の導入により、投資家の負担が軽減され、市場の活性化が期待されています。

税制改正のメリット

税制改正により、暗号資産の税負担が軽減され、投資環境が改善されます。具体的には、以下のようなメリットがあります。

税率が一律20.315%に引き下げられ、税負担が軽減される。
損失繰越が3年間可能になり、税負担の平準化が可能になる。
投資環境が改善され、市場の活性化が期待される。
海外との格差が縮小され、国際競争力が維持される。
投資家の負担が軽減され、市場の健全な発展が促進される。

これらのメリットにより、暗号資産市場のさらなる発展が期待されています。

税制改正の注意点

税制改正により、暗号資産の税負担が軽減されますが、いくつかの注意点もあります。

NISAの適用は当面見込まれていないため、非課税枠は利用できない。
税率が一律20.315%になるため、所得が低い投資家にとっては逆に税負担が増える可能性がある。
損失繰越は3年間可能だが、それ以上は認められない。
改正後の詳細なルールや手続きは、今後も変更される可能性がある。

これらの点に注意しながら、税制改正を活用することが重要です。

暗号資産の税金の計算方法

暗号資産の税金は、売却時の差益（売却価額－取得価額）に対して課税されます。具体的な計算方法は以下の通りです。

売却価額から取得価額を引いて、差益を計算する。
差益に対して税率を適用する。
所得税と住民税を合算して、税金を計算する。

たとえば、2万円で購入した暗号資産を5万円で売却した場合、差益は3万円です。改正後は税率が20.315%なので、税金は3万円×20.315%＝6,094.5円となります。

また、複数回取引を行った場合は、各取引ごとの差益を計算し、合計して税金を計算します。損失が出た場合は、損失繰越が可能なので、翌年以降3年間繰り越して、利益と相殺できます。

暗号資産の税金の申告方法

暗号資産の税金は、確定申告が必要です。具体的な申告方法は以下の通りです。

取引履歴を確認し、売却価額と取得価額を記録する。
差益を計算し、税金を計算する。
確定申告書に記入し、税務署に提出する。

取引履歴は、取引所の取引履歴やウォレットの履歴などを活用できます。また、税務署のウェブサイトや税理士に相談することもおすすめです。

まとめ

暗号資産の税率は、2026年から現行の最大55%から一律20.315%に引き下げられ、申告分離課税が導入されます。これにより、税負担が大幅に軽減され、損失繰越も3年間可能になります。投資環境が改善され、市場の活性化が期待されています。海外との比較でも、日本は改正後、税率が低く、損失繰越も可能になるため、投資家にとって有利な環境になります。ただし、NISAの適用は当面見込まれず、税率が一律になるため、所得が低い投資家にとっては逆に税負担が増える可能性もあります。税制改正の詳細なルールや手続きは、今後も変更される可能性があるため、注意が必要です。暗号資産の税金は、売却時の差益に対して課税され、確定申告が必要です。取引履歴を確認し、差益を計算し、税金を計算して、確定申告書に記入し、税務署に提出します。取引履歴は、取引所の取引履歴やウォレットの履歴などを活用できます。税務署のウェブサイトや税理士に相談することもおすすめです。