SBIグループの暗号資産事業とは
SBIグループは1999年にインターネットを活用した金融サービスのパイオニアとして設立された日本の大手金融グループです。現在、グループ全体で11兆円を超える資産を管理し、世界中で6,500万人以上の顧客基盤を有しています。このような規模と経験を背景に、SBIグループは暗号資産事業を通じて、デジタル金融エコシステムの構築に積極的に取り組んでいます。
暗号資産事業は、SBIグループの重要な事業セグメントの一つとして位置づけられており、様々な暗号資産の販売・取引サービスを提供しています。この事業は、投資スタイルに合わせたカスタマイズされた資産管理を実現することを目指しており、機関投資家から個人投資家まで、幅広い顧客層に対応しています。
暗号資産事業の急速な成長
SBIグループの暗号資産事業は、近年著しい成長を遂げています。2024年度の実績では、暗号資産事業の売上高は571億円に達し、前年度比で88.5%の増加を記録しました。この数字は、暗号資産市場全体の強気相場と、SBIグループの事業展開の成功を示す重要な指標となっています。
この成長の背景には、機関投資家がデジタル資産関連市場に本格的に参入し始めたことがあります。SBIグループは、ブロックチェーン技術を含む暗号資産関連の様々なビジネスに参入することで、金融がより一層デジタル化される時代に向けた準備を進めています。
主要な暗号資産取引プラットフォーム
SBI VC Trade
SBI VC Tradeは、SBIグループの主力となる暗号資産取引プラットフォームです。このプラットフォームでは、ビットコイン、イーサリアム、リップル、ライトコイン、ドージコイン、ソラナなど、23種類の暗号資産を取り扱っています。SBI VC Tradeは、個人投資家向けの使いやすいインターフェースと、充実した取引機能を備えており、初心者から経験者まで幅広いユーザーに対応しています。
2023年度には、SBI VC Tradeで新たに6種類の暗号資産の取り扱いが開始されました。これにより、ユーザーはより多くの投資選択肢を得ることができるようになりました。さらに、ステーキングサービスも提供されており、保有する暗号資産から追加の収益を得る機会が提供されています。
BITPoint Japan
BITPoint Japanは、SBIグループの別の重要な暗号資産取引プラットフォームです。このプラットフォームでは、24種類の暗号資産を取り扱っており、SBI VC Tradeと合わせると、グループ全体で33種類の暗号資産を提供しています。BITPoint Japanは、独自の特徴と機能を備えており、異なるユーザーニーズに対応するための選択肢を提供しています。
B2C2とSBI Alpha Trading
B2C2は、機関投資家向けの暗号資産取引サービスを提供しており、海外の取引フローを取り込むことで、暗号資産事業の収益拡大に大きく貢献しています。2023年度の暗号資産事業の売上高増加の主要な要因の一つとなっています。
SBI Alpha Tradingは、高度な取引戦略と分析ツールを提供するプラットフォームであり、より専門的な投資家向けのサービスを展開しています。
取り扱い暗号資産の多様性
SBIグループが取り扱う暗号資産は、時価総額の大きい主要な銘柄から、成長性が期待される新興銘柄まで、多岐にわたっています。ビットコイン、イーサリアム、リップルなどの主要銘柄に加えて、ソラナ、ドージコイン、ポルカドット、チェーンリンク、マティック、シバイヌなど、様々な特性を持つ暗号資産が提供されています。
このような多様な暗号資産の取り扱いにより、ユーザーは自身の投資戦略や市場見通しに応じて、最適なポートフォリオを構築することができます。また、新しい暗号資産の定期的な追加により、市場の変化に対応した投資機会が継続的に提供されています。
ブロックチェーン技術とのシナジー
SBIグループは、暗号資産事業だけでなく、ブロックチェーン技術そのものの開発と活用にも力を入れています。グループ内の複数の企業がブロックチェーン技術を活用しており、投資活動を通じてこの分野の推進を図っています。
2018年1月には、SBI Investmentが600億円のファンドを立ち上げ、AIとブロックチェーンを主要な投資対象として、世界中の有望なスタートアップに投資を行っています。このような投資活動を通じて、SBIグループはブロックチェーン技術の発展に貢献しており、同時に将来の成長機会を確保しています。
国際的なパートナーシップと技術提携
Chainlinkとの提携
SBIグループは、ブロックチェーン技術の大手企業であるChainlinkと提携し、日本およびアジア太平洋地域の銀行と金融機関向けのブロックチェーンツール開発に取り組んでいます。この提携により、従来の金融機関がブロックチェーン技術を活用するための基盤が整備されつつあります。
Rippleとの協業
SBIグループは、国際送金技術で知られるRippleと協力し、日本でのステーブルコイン流通に関する取り組みを進めています。SBI VC Tradeの最高経営責任者は、SBIグループが日本の暗号資産およびブロックチェーン分野の発展を主導していることを述べており、このような国際的なパートナーシップはその実績を示すものとなっています。
Startale Groupとの戦略的ジョイントベンチャー
2025年8月、SBIグループはグローバルな暗号資産インフラの大手企業であるStartale Group Pte Ltdと戦略的ジョイントベンチャーを発表しました。このパートナーシップは、トークン化された株式と実世界資産(RWA)に焦点を当てたオンチェーン取引プラットフォームの立ち上げを目指しています。
このジョイントベンチャーは、2033年までに18.9兆ドルに達すると予想されるトークン化資産市場の機会に直接対応するものです。プラットフォームは、24時間365日のオンチェーン取引機能と、低手数料のクロスボーダー決済インフラを備えることを目指しており、2025年が「暗号資産における機関投資家採用の年」として認識される中、機関投資家向けのグレードの高いオンチェーン取引インフラを世界的に提供することを目標としています。
次世代取引プラットフォームの技術的特徴
Startale Groupとの提携により開発されるプラットフォームは、複数の先進的な技術機能を備えています。まず、アカウント抽象化技術により、小売ユーザーにとって複雑なウォレット管理が不要になります。これにより、暗号資産取引への参入障壁が大幅に低下することが期待されています。
次に、機関投資家向けのカストディソリューションが提供され、最高水準のセキュリティと規制基準を満たす資産管理が実現されます。さらに、小売ユーザー向けのシームレスなオンボーディング機能により、これまで独占的だった市場へのアクセスが可能になります。
プラットフォームには、リアルタイムのコンプライアンス監視機能も組み込まれており、国際的な規制要件への適合性が確保されます。これらの技術的特徴により、グローバルな機関投資家と個人投資家の両者にとって、安全で効率的な取引環境が実現されることになります。
マイニング関連サービス
SBIグループの暗号資産事業は、取引プラットフォームだけに限定されていません。SBI Cryptoという関連企業を通じて、マイニング関連のサービスも提供しています。
SBI Mining Poolは、業界でも最低水準の手数料と最高水準のペイアウトを提供するマイニングプールサービスです。ユーザーフレンドリーなインターフェースと応答性の高いカスタマーサポートが特徴となっており、ソロマイニング、リファーラルプログラム、ハッシュレート分割など、多様な機能が提供されています。
さらに、マイナーファイナンスサービスも提供されており、暗号資産担保ローン、資産担保ローン、ハッシュレート担保ローンなど、マイニング事業者の資金調達ニーズに対応しています。加えて、マイナー購入やデータセンター設備に関するコンサルティングサービスも利用可能であり、マイニング事業者の総合的なサポートが実現されています。
ステーキングサービスの提供
SBIグループの暗号資産事業では、ステーキングサービスも重要な役割を果たしています。ステーキングは、保有する暗号資産をネットワークに預けることで、ブロックチェーンの検証プロセスに参加し、その見返りとして報酬を得る仕組みです。
2023年度には、ステーキングサービスが好調に推移し、多くのユーザーがこのサービスを利用して追加の収益を得ています。このサービスにより、単なる暗号資産の保有だけでなく、より積極的な資産運用が可能になっています。
日本における暗号資産市場のリーダーシップ
SBIグループは、日本の暗号資産およびブロックチェーン分野の発展において、主導的な役割を果たしています。グループの経営陣は、日本がこの分野で国際的なリーダーシップを発揮することの重要性を認識しており、継続的な投資と事業展開を行っています。
国内の規制環境が整備される中で、SBIグループは適切なコンプライアンス体制を構築しながら、暗号資産事業を拡大しています。このアプローチにより、ユーザーは安心して暗号資産取引に参加することができるようになっています。
デジタル金融エコシステムの構築
SBIグループが暗号資産事業に注力する背景には、より広範なデジタル金融エコシステムの構築という戦略的目標があります。グループは、証券、銀行、保険などの従来の金融サービスと、暗号資産やブロックチェーン技術を統合することで、次世代の金融サービスプラットフォームを実現しようとしています。
このエコシステムの中で、暗号資産事業は重要な構成要素として機能しており、顧客に対して多様な金融商品とサービスを提供する基盤となっています。機関投資家がデジタル資産市場に本格的に参入する中で、SBIグループのこのような統合的なアプローチは、競争力を高める要因となっています。
規制対応とコンプライアンス
SBIグループの暗号資産事業は、日本の厳格な規制要件に対応する形で展開されています。金融商品取引法に基づく登録要件を満たし、適切な内部統制体制を構築することで、ユーザーの資産保護と市場の健全性維持に努めています。
国際的なパートナーシップを通じて、グローバルな規制基準への対応も進められており、クロスボーダー取引においても適切なコンプライアンス体制が整備されています。このような規制対応の充実により、SBIグループの暗号資産事業は、信頼性の高いプラットフォームとして認識されています。
顧客基盤の拡大と多様化
SBIグループの暗号資産事業は、個人投資家から機関投資家まで、幅広い顧客層に対応するサービスを提供しています。個人投資家向けには、使いやすいプラットフォームと充実した教育コンテンツが提供され、機関投資家向けには、高度な取引機能とカストディサービスが用意されています。
グループ全体で6,500万人以上の顧客基盤を有することで、暗号資産事業も既存顧客へのクロスセリング機会を活用することができます。これにより、暗号資産事業の成長と、グループ全体の顧客満足度向上が同時に実現されています。
今後の展望と成長機会
SBIグループの暗号資産事業は、今後も継続的な成長が期待されています。トークン化資産市場の拡大、機関投資家の参入増加、ブロックチェーン技術の実用化進展など、複数の成長要因が存在しています。
特に、Startale Groupとのジョイントベンチャーにより開発されるオンチェーン取引プラットフォームは、グローバルな市場機会を開く可能性を秘めています。24時間365日の取引、低手数料のクロスボーダー決済、機関投資家グレードのインフラなど、これまでにない取引環境が実現されることで、新たな顧客層の開拓が可能になります。
また、ブロックチェーン技術の金融機関への普及が進む中で、SBIグループのChainlinkとの提携やRippleとの協業は、新たなビジネス機会を生み出す可能性があります。これらの取り組みにより、SBIグループは暗号資産事業を通じて、日本の金融業界全体のデジタル化を牽引する立場を強化していくことが期待されています。
まとめ
SBIグループの暗号資産事業は、日本の金融業界におけるデジタル化の最前線を走る重要な事業セグメントです。SBI VC TradeやBITPoint Japanなどの取引プラットフォームを通じて、個人投資家から機関投資家まで幅広い顧客に対応しており、2024年度には売上高が571億円に達するなど、著しい成長を遂げています。Chainlink、Ripple、Startale Groupなどとの国際的なパートナーシップにより、ブロックチェーン技術の活用と暗号資産市場の拡大に貢献しています。マイニングサービスやステーキングサービスなど、多様なサービスラインアップにより、顧客のニーズに対応した総合的な暗号資産ソリューションを提供しています。今後、トークン化資産市場の成長と機関投資家の参入増加により、さらなる事業拡大が期待されており、SBIグループは日本の金融デジタル化を牽引する企業として、その役割を強化していくと考えられます。
SBIの暗号資産事業が急成長─売上571億円、StartaleとのJVで拓くトークン化時代のオンチェーン戦略をまとめました
SBIグループの暗号資産事業は、単なる暗号資産の取引仲介に留まらず、ブロックチェーン技術の活用、マイニングサービス、ステーキングサービスなど、多面的なアプローチを採用しています。国際的なパートナーシップを通じて、グローバルな市場機会を開拓しながら、同時に日本国内の規制要件に対応した信頼性の高いサービスを提供しています。機関投資家の参入増加とトークン化資産市場の拡大という市場環境の中で、SBIグループは暗号資産事業を通じて、日本の金融業界全体のデジタル化を牽引する重要な役割を果たしており、今後も継続的な成長と事業拡大が期待されています。



人気記事