はじめに
仮想通貨市場の急速な成長に伴い、ビットコインをはじめとする暗号資産の盗難被害が深刻化しています。2025年は暗号資産業界にとって特に厳しい年となり、盗難被害額は過去最高水準に達しました。本記事では、2025年のビットコイン盗難の実態、主要な事件、そして利用者が講じるべき対策について詳しく解説します。
2025年の暗号資産盗難被害の規模
2025年1月から12月初旬までの期間における暗号資産全体の盗難総額は、34億1,000万ドル(約5,300億円)を超えました。この数字は前年の33億8,000万ドルから増加しており、暗号資産の普及と評価額の上昇に伴い、盗難被害も拡大していることを示しています。
特に注目すべき点は、盗難被害が加速しているということです。過去最悪であった2022年には、被害額が20億ドルに達するまでに214日を要しましたが、2025年ではわずか142日で同規模の被害に達しており、被害拡大のペースが著しく加速しています。この傾向は、セキュリティ対策の強化が急務であることを示唆しています。
ビットコイン盗難の主要な事件
Bybitハッキング事件
2025年2月に発生した仮想通貨取引所Bybitへのハッキングは、暗号資産史上最大規模となる事件です。この事件では15億ドル(約2,300億円)規模の盗難が発生し、2025年全体の盗難被害の約44%を占めました。盗まれた資産の大部分はイーサリアム(ETH)でしたが、ビットコインを含む複数の暗号資産が対象となりました。
この事件は北朝鮮関連のハッカー組織「ラザルス」による犯行であることが突き止められています。同組織は取引所内にITワーカーを潜り込ませることで特権的アクセスを獲得し、大規模な侵害を実行しました。この手口は、単なる外部からの攻撃ではなく、内部からの協力者を活用した組織的な犯行であることを示しており、セキュリティ対策の複雑さを浮き彫りにしています。
その他の主要ハッキング事件
2025年に発生した盗難事件のうち、上位3つのハッキングで損失全体の69%を占めています。Bybit事件以外にも、複数の取引所やサービスが被害を受けました。例えば、インドの暗号資産取引所CoinDCXは約4,420万ドルの盗難被害を受け、BigONE取引所は2,800万ドルの損失を報告しています。
これらの事件から明らかになったのは、攻撃者が多様な手口を用いて複数の標的を狙っているということです。内部アカウントへの巧妙な攻撃、フィッシング詐欺、ブロックチェーンの脆弱性の悪用など、様々な方法が用いられています。
北朝鮮による盗難被害の拡大
2025年における北朝鮮関連のハッカー組織による盗難額は、約20億2,000万ドル(約3,100億円)に達しました。これは前年から約51%増加しており、単年としては過去最悪の水準です。北朝鮮による累計暗号資産窃取額は約67億5,000万ドル(約1.6兆円)に達したと推定されており、国家規模での組織的な盗難活動が継続していることを示しています。
北朝鮮がこれほど大規模な盗難を実行できる背景には、高度な技術力と組織的な体制があります。同国は経済制裁下にあり、外貨獲得の手段として暗号資産の盗難を戦略的に実行しているとみられています。このため、単なる犯罪者による盗難ではなく、国家支援型のサイバー攻撃として対応する必要があります。
個人ウォレットからの盗難被害
取引所だけでなく、個人ウォレットからの盗難被害も増加しています。2025年に個人ウォレットの侵害は15万8,000件に達し、少なくとも8万人が被害を受けました。個人から盗まれた総額は、前年の15億ドルから7億1,300万ドル(約1,100億円)に減少しているものの、被害件数は増えている状況です。
興味深いことに、個人ウォレットからアセットごとに盗まれた価値を分析すると、ビットコインが盗まれた資産の大部分を占めています。また、ビットコインを保有していた個人ウォレットが攻撃された際の平均損失額は年々増加しており、攻撃者がより高額な資産を持つウォレットを意図的に狙っていることが示唆されます。
ビットコイン盗難の手口と特徴
内部からのアクセス悪用
2025年の盗難事件で顕著な特徴は、内部からのアクセス悪用です。北朝鮮のハッカー組織は、取引所や保管銀行にITワーカーを潜り込ませることで、特権的アクセスを獲得しています。これにより、外部からの攻撃では実現困難な大規模な盗難が可能になります。
ブロックチェーンの脆弱性悪用
2025年7月には、暗号資産関連のハッキング被害額が前月比で27.2%増加し、総額1億4,200万ドル(約200億円)に達しました。この増加は、悪意のある攻撃者がブロックチェーンの脆弱性を悪用する動きを強めていることを示しています。
フィッシングと社会工学的攻撃
個人ウォレットの盗難では、フィッシング詐欺や社会工学的攻撃が多用されています。攻撃者は、ユーザーの秘密鍵やパスフレーズを詐欺的に入手し、ウォレットにアクセスします。これらの攻撃は技術的な脆弱性よりも、ユーザーの不注意や知識不足を狙ったものが多いです。
ビットコイン盗難から身を守るための対策
強力なセキュリティ対策の実施
個人がビットコインを保護するためには、複数のセキュリティ層を構築することが重要です。まず、ウォレットの秘密鍵は絶対に他人と共有してはいけません。また、複雑で予測困難なパスワードを設定し、定期的に変更することが推奨されます。
ハードウェアウォレットの活用
ビットコインを長期保有する場合、ハードウェアウォレット(コールドウォレット)の使用が推奨されます。これらのデバイスはインターネットに接続されないため、オンライン攻撃のリスクが大幅に低減されます。ハードウェアウォレットは、秘密鍵をオフラインで管理し、トランザクション署名のみをデバイス上で実行します。
二段階認証の有効化
取引所やウォレットサービスを利用する場合、二段階認証(2FA)を必ず有効化してください。特に、認証アプリを使用した方式(TOTP)は、SMS認証よりもセキュリティが高いとされています。
信頼できるサービスの選択
ビットコインを預ける取引所やウォレットサービスを選ぶ際には、セキュリティ履歴、規制対応、保険制度などを確認することが重要です。大規模な盗難事件を経験した取引所でも、その後のセキュリティ強化と対応力が重要な判断基準となります。
フィッシング詐欺への警戒
メールやSNSで届く、ウォレットやアカウント情報の確認を求めるメッセージには応じないようにしてください。公式サイトのURLを直接入力してアクセスし、リンクをクリックして遷移することは避けるべきです。
バックアップと復旧方法の確保
ウォレットのバックアップ(シードフレーズやリカバリーコード)は、安全な場所に保管してください。複数の場所に分散して保管することで、デバイスの紛失や故障時にも資産を復旧できます。ただし、バックアップ情報自体が盗まれないよう、細心の注意が必要です。
取引所とサービスプロバイダーの責任
2025年の大規模ハッキング事件を受けて、取引所やウォレットサービスプロバイダーのセキュリティ責任がより厳しく問われるようになっています。業界全体として、以下のような対策が求められています。
多層防御の構築
単一のセキュリティ対策では不十分であり、複数の防御層を組み合わせることが必要です。ファイアウォール、侵入検知システム、エンドポイント保護、ネットワーク分離など、多角的なアプローチが求められます。
従業員のセキュリティ教育
内部からのアクセス悪用を防ぐため、従業員に対するセキュリティ教育が重要です。特に、社会工学的攻撃への対抗能力を高めることが必要です。
インシデント対応体制の整備
盗難事件が発生した場合、迅速かつ適切に対応できる体制が必要です。被害の最小化、ユーザーへの通知、当局への報告、資金の追跡と回収など、複数のプロセスが含まれます。
保険制度の充実
ユーザーの資産を保護するため、盗難被害に対する保険制度の充実が重要です。これにより、万が一盗難が発生した場合でも、ユーザーの損失を補償することができます。
業界全体の課題と今後の展望
2025年のビットコイン盗難被害の拡大は、暗号資産業界全体が直面する課題を浮き彫りにしています。以下のような点が、今後の改善が必要な領域です。
規制とコンプライアンスの強化
各国の規制当局は、暗号資産サービスプロバイダーに対するセキュリティ基準の設定と監督を強化しています。これにより、業界全体のセキュリティ水準の向上が期待されます。
技術的なセキュリティ向上
ブロックチェーン技術自体のセキュリティ向上、スマートコントラクトの監査強化、新しい暗号化技術の導入など、技術的な対策が継続的に進められています。
国際的な協力
北朝鮮による国家規模のサイバー攻撃に対抗するため、各国政府と業界が協力して情報共有と対策を進める必要があります。
ユーザー教育の充実
個人ユーザーのセキュリティ意識向上が、盗難被害の減少に直結します。業界全体として、ユーザー教育に投資することが重要です。
ビットコイン保有者が知るべき重要なポイント
ビットコインを保有する際に、特に注意すべき点をまとめます。
第一に、秘密鍵の管理は最優先事項です。秘密鍵が漏洩すれば、ビットコインは盗まれます。秘密鍵は絶対にオンラインで保管してはいけません。
第二に、取引所に資産を預けっぱなしにすることは避けるべきです。取引所は盗難のリスクにさらされており、2025年の事件がこれを証明しています。長期保有する場合は、自分で管理できるウォレットに移すことが推奨されます。
第三に、詐欺サイトやフィッシングメールに注意してください。公式サイトのURLを確認し、不審なリンクはクリックしないようにしましょう。
第四に、バックアップを複数の場所に保管してください。デバイスの故障や紛失に備えて、復旧方法を確保することが重要です。
第五に、セキュリティソフトウェアを最新に保つことが大切です。コンピュータやスマートフォンのOSやアプリケーションは、定期的にアップデートしてください。
まとめ
2025年は暗号資産業界にとって、セキュリティ上の課題が顕在化した年となりました。34億ドルを超える盗難被害、特にBybitの15億ドル事件は、業界全体に大きな影響を与えています。北朝鮮による国家規模のサイバー攻撃の増加も、新たな脅威として認識されるようになりました。しかし、これらの課題に対して、個人ユーザー、取引所、規制当局が協力して対策を講じることで、より安全な暗号資産エコシステムの構築が可能です。ビットコインを安全に保有するためには、強力なセキュリティ対策、信頼できるサービスの選択、継続的な学習が不可欠です。
2025年ビットコイン盗難の実態:Bybit15億ドル流出と北朝鮮ハッカー、今すぐ実践すべき防衛策をまとめました
ビットコイン盗難の脅威は、暗号資産市場の成長に伴い増加し続けています。2025年の被害額は過去最高水準に達し、特に北朝鮮による組織的な攻撃が深刻化しています。個人ユーザーが講じるべき対策としては、ハードウェアウォレットの活用、強力なパスワード管理、二段階認証の有効化、フィッシング詐欺への警戒が挙げられます。取引所やサービスプロバイダーは、多層防御の構築、従業員教育、インシデント対応体制の整備が求められています。業界全体が協力して、セキュリティ水準を向上させることで、より安全な暗号資産エコシステムの実現が可能になります。ビットコイン保有者は、自分の資産を守るための知識と対策を継続的に学習し、実践することが重要です。



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