イーサリアム系コインとは
イーサリアム系コインとは、イーサリアムというブロックチェーンネットワーク上で発行・運用されるトークンの総称です。イーサリアムはビットコインに次ぐ時価総額を持つ主要な暗号資産ですが、単なる通貨としての機能だけでなく、独自のプラットフォーム機能を備えています。このプラットフォーム上では、様々な目的を持つトークンが自由に発行でき、それらが総じてイーサリアム系コインと呼ばれています。
イーサリアムの最大の特徴は、スマートコントラクトと呼ばれるプログラム機能を導入している点にあります。この機能により、中央集権的な管理者が不要な分散型のアプリケーションを構築することが可能になりました。これにより、イーサリアムは単なる価値の保存手段ではなく、様々なサービスやアプリケーションを実行するためのプラットフォームとして機能しています。
イーサリアムの基本的な特徴
イーサリアムを理解するためには、まずその基本的な特徴を把握することが重要です。イーサリアムはビットコインとは異なる設計思想に基づいており、いくつかの重要な特徴を持っています。
第一に、イーサリアムには発行上限が設定されていません。ビットコインが2,100万枚という厳密な上限を持つのに対し、イーサリアムは無制限に発行される可能性があります。ただし、イーサリアムはこの無制限性を補うため、2021年8月に実施されたロンドンハードフォークによってバーン機能を導入しました。バーンとは、取引手数料の一部を消却することで、市場に流通するイーサリアムの数を制限する仕組みです。これにより、通貨の希少性と価格の安定性を担保しています。
第二に、イーサリアムはコンセンサスアルゴリズムとしてPoS(Proof of Stake)を採用しています。これはビットコインが採用するPoW(Proof of Work)とは異なる方式で、より高速で効率的なブロック生成を実現しています。イーサリアムのブロック生成時間は約15秒と、ビットコインの約10分と比較して大幅に短縮されています。
第三に、イーサリアムはDeFi(分散型金融)構築のプラットフォームとして機能しています。DeFiとは、従来の金融機関を介さずに、ブロックチェーン上で直接金融サービスを提供する仕組みです。イーサリアムのスマートコントラクト機能により、このようなDeFiアプリケーションの構築が容易になっています。
ERC規格とトークンの種類
イーサリアム系コインの多様性を理解するためには、ERC規格について知ることが不可欠です。ERCとは、イーサリアム上で新しいトークンを発行する際に従うべき技術的な規格を定めたものです。この規格により、異なるプロジェクトが発行したトークン同士の互換性が保証され、スムーズな取引や交換が可能になります。
最も基本的で広く使用されているのはERC-20規格です。ERC-20は「代替可能(Fungible)」なトークンを扱う基本的な規格で、一つのトークンが他のトークンと完全に交換可能であることを特徴としています。2017年頃に多くのプロジェクトが実施したICO(イニシャル・コイン・オファリング)で資金調達の手段として発行されたトークンの大半が、このERC-20規格で作られました。USDTなどのステーブルコインも、このERC-20規格を採用しています。
ERC-20規格の柔軟性により、単なる通貨型トークンにとどまらず、様々な形態のトークンが設計できるようになりました。例えば、ガバナンストークンは組織の議決権を与えるトークンとして機能し、プロジェクトの重要な決定に参加する権利を保有者に付与します。また、ステーブルコインは米ドルなどの法定通貨に連動する価値を持つトークンで、価格変動を最小限に抑えた安定的な取引を実現しています。
次に重要なのはERC-721規格です。これは「非代替性(Non-Fungible)」を特徴とするNFT(Non-Fungible Token)を扱う規格です。ERC-20とは異なり、ERC-721で発行されたトークンは一つ一つが固有の価値を持ち、他のトークンと交換不可能です。CryptoKittiesなどのデジタルコレクティブルやデジタルアート作品は、このERC-721規格を採用しています。
さらに新しい規格として、ERC-1155があります。これは2019年に提案された比較的新しい規格で、一つのスマートコントラクト内で複数種類のトークンを管理できるという特徴を持っています。具体的には、ゲーム内通貨のようなERC-20型のFungibleトークンと、キャラクターや武器のように一点物として扱うERC-721型のNFTをまとめて定義することが可能です。SANDなどのメタバース関連トークンは、このERC-1155規格を活用しています。
このほかにも、ERC-721A、ERC-3525、ERC-6551など、多くの種類のERC規格が存在しており、様々なトークンに互換性を持たせています。これらの多様な規格により、イーサリアム上では実に様々な目的を持つトークンが発行・運用されています。
主要なイーサリアム系コイン
イーサリアム系コインの中でも、特に注目される主要なコインについて紹介します。
イーサリアム(ETH)
イーサリアム(ETH)は、イーサリアムネットワークの公式通貨であり、時価総額でトップクラスを誇る暗号資産です。イーサリアムプラットフォーム上でのあらゆる取引やスマートコントラクトの実行には、ガス代と呼ばれる手数料の支払いが必要であり、この手数料はETHで支払われます。つまり、イーサリアムネットワークを利用するすべてのユーザーにとって、ETHは必須の資産となっています。
ETHは発行上限が設定されていないという特徴を持ちますが、これはイーサリアムが多くの人に開かれることを目的として開発されたためです。バーン機能の導入により、供給量の制限と価格の安定化が図られています。
ポリゴン(POL)
ポリゴン(Polygon/POL)とは、イーサリアムをより普及させるために開発された「Polygon(旧:Matic Network)」で使用されるトークンです。ポリゴンはイーサリアムの拡張を目的とした「レイヤー2スケーリングソリューション」として開発されています。
レイヤー2スケーリングソリューションとは、イーサリアムメインネットの処理負荷を軽減し、より高速で低コストの取引を実現するための技術です。ポリゴンを利用することで、ユーザーはイーサリアムの安全性を保ちながら、より効率的な取引環境を享受できます。
イーサリアムクラシック(ETC)
イーサリアムクラシック(ETC)は、イーサリアムから分岐した別のブロックチェーンネットワークで使用されるトークンです。2016年のハードフォーク後、イーサリアムは市場への柔軟な対応を行う方針を採用し、PoSへの移行を進めました。一方、イーサリアムクラシックは従来どおりの運用を続ける方針を採用し、PoW(Proof of Work)を採用し続けています。
イーサリアムクラシックはPoWを採用しているため、従来どおりの高いセキュリティと、発行上限による仮想通貨の希少性を維持できます。ただし、時価総額ランキングではイーサリアムがイーサリアムクラシックの上位に位置しており、ユーザーはイーサリアムの方をより支持していることが明らかです。
イーサリアム系コインの活用分野
イーサリアム系コインは、様々な分野で活用されています。その多様な用途について紹介します。
DeFi(分散型金融)
DeFiは、イーサリアムのスマートコントラクト機能を活用した最も重要な応用分野の一つです。DeFiプラットフォームでは、従来の銀行や証券会社などの金融機関を介さずに、ユーザー同士が直接金融取引を行うことができます。貸借、取引、デリバティブなど、様々な金融サービスがDeFiプラットフォーム上で提供されています。
NFTとデジタルコレクティブル
ERC-721やERC-1155などの規格により、イーサリアム上ではNFT(非代替性トークン)が広く活用されています。デジタルアート、ゲーム内アイテム、仮想不動産など、様々なデジタル資産がNFTとして発行・取引されています。
ガバナンスと投票
多くのイーサリアム系プロジェクトでは、ガバナンストークンを発行し、トークン保有者にプロジェクトの重要な決定への投票権を付与しています。これにより、分散型の意思決定が実現され、プロジェクトの民主的な運営が可能になります。
ステーブルコイン
USDTなどのステーブルコインは、イーサリアム上で広く利用されています。ステーブルコインは法定通貨に連動する価値を持つため、価格変動を最小限に抑えた安定的な取引が可能です。これにより、暗号資産市場における価値の保存手段として機能しています。
イーサリアム系コインの技術的な利点
イーサリアム系コインが広く採用されている理由には、いくつかの技術的な利点があります。
第一に、スマートコントラクト機能により、複雑な条件を自動的に実行することが可能です。これにより、仲介者を必要としない信頼性の高い取引が実現されます。
第二に、イーサリアムネットワークは高い汎用性を持っています。様々な目的を持つアプリケーションが構築でき、多様なトークンが発行できるため、イーサリアムは「ブロックチェーンのプラットフォーム」として機能しています。
第三に、イーサリアムコミュニティは非常に活発で、継続的な技術開発が行われています。新しいERC規格の提案や、ネットワークの改善提案が常に検討されており、イーサリアムエコシステムは進化し続けています。
第四に、イーサリアムネットワークの安全性は高く、多くのユーザーと開発者に信頼されています。大規模なプロジェクトがイーサリアム上で構築されることで、ネットワークの価値と信頼性がさらに向上しています。
イーサリアム系コインの多様性
イーサリアム系コインの最大の特徴は、その多様性にあります。単一の規格に限定されず、様々なERC規格により、実に多くの種類のトークンが発行されています。
ガバナンストークンは、プロジェクトの運営に参加する権利を与えるトークンです。これにより、プロジェクトの方向性や重要な決定に、トークン保有者が直接関与することができます。
ステーブルコインは、法定通貨に連動する価値を持つトークンです。暗号資産市場の価格変動から保護されるため、安定的な価値の保存手段として機能します。
ユーティリティトークンは、特定のサービスやプラットフォームで使用するためのトークンです。例えば、ゲーム内通貨として機能するトークンや、特定のDeFiプラットフォームで使用されるトークンなどがあります。
NFTトークンは、デジタル資産の所有権を表すトークンです。一点物のデジタルアートから、ゲーム内アイテムまで、様々なデジタル資産がNFTとして発行されています。
イーサリアムエコシステムの成長
イーサリアムエコシステムは、継続的に成長しています。多くの企業やプロジェクトがイーサリアム上でアプリケーションを構築し、新しいトークンを発行しています。
Web3やメタバースの成長に伴い、イーサリアムはこれらの新しい技術領域の基盤として機能しています。分散型のアプリケーション、デジタル資産の管理、ユーザーの自主権の確保など、イーサリアムが提供する機能は、Web3やメタバースの実現に不可欠です。
イーサリアムコミュニティは、継続的にネットワークの改善と拡張に取り組んでいます。新しい技術の導入、スケーラビリティの向上、セキュリティの強化など、様々な面でイーサリアムは進化し続けています。
イーサリアム系コインの今後の展望
イーサリアム系コインの今後の展望は、非常に明るいものと考えられます。DeFiの成長、NFT市場の拡大、Web3の普及など、イーサリアムの需要は増加し続けると予想されます。
イーサリアムネットワークの技術的な改善により、より高速で低コストの取引が実現されるでしょう。これにより、より多くのユーザーがイーサリアムを利用するようになり、エコシステムはさらに拡大することが期待されます。
新しいERC規格の開発により、より多様な用途を持つトークンが発行されるようになるでしょう。これにより、イーサリアムの応用分野はさらに広がり、より多くの産業がイーサリアムの恩恵を受けることになると考えられます。
イーサリアムが暗号資産という枠を超え、Web3やメタバースの成長に直結する基盤技術として認識されることで、その重要性と価値はさらに高まっていくでしょう。
まとめ
イーサリアム系コインは、イーサリアムというブロックチェーンプラットフォーム上で発行・運用される多様なトークンの総称です。ERC-20、ERC-721、ERC-1155などの様々な規格により、ガバナンストークン、ステーブルコイン、NFト、ユーティリティトークンなど、実に多くの種類のトークンが発行されています。イーサリアムのスマートコントラクト機能により、DeFi、NFT、Web3など、様々な分野でイーサリアム系コインが活用されています。イーサリアムエコシステムは継続的に成長し、その技術的な改善と多様な応用により、今後さらに重要性が高まっていくと考えられます。
初心者でもわかるイーサリアム系コイン入門:ERC規格からDeFi・NFT・主要コインまでをまとめました
イーサリアム系コインは、単なる暗号資産の一種ではなく、ブロックチェーン技術の多様な応用を実現するための基盤です。スマートコントラクト機能により、信頼性の高い自動実行が可能になり、様々なERC規格により、多くの種類のトークンが発行できます。DeFi、NFT、ガバナンス、ステーブルコインなど、イーサリアム系コインの応用分野は非常に広く、その重要性は日々高まっています。イーサリアムエコシステムの継続的な成長と技術的な改善により、イーサリアム系コインは今後、Web3やメタバースなどの新しい技術領域の中心的な役割を果たしていくと予想されます。



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