はじめに
暗号資産への投資が世界的に広がる中、日本でも暗号資産を投資対象とするETF(上場投資信託)の組成に向けた動きが活発化しています。大手金融グループのSBIホールディングスは、この分野で先導的な役割を果たしており、複数の暗号資産関連商品の開発を進めています。本記事では、SBIが展開する暗号資産ETFについて、その特徴や背景、投資家にとっての利点などを詳しく解説します。
SBIが進める暗号資産ETF組成の背景
SBIホールディングスが暗号資産を組み入れたETFの組成を計画している背景には、国内外の市場環境の変化があります。2024年1月にアメリカの証券取引委員会(SEC)が現物ビットコインETFを承認したことで、世界的に暗号資産への投資アクセスが大きく改善されました。これまで暗号資産取引所での取引に抵抗があった機関投資家や個人投資家が、証券口座を通じて簡単にビットコインに投資できるようになったのです。
国内においても、ビットコイン等の一部の暗号資産が時価総額やパフォーマンス面で中長期的な資産形成に資する資産としての性質を示すようになり、国民の投資対象として適切な資産として認識されるようになってきました。さらに、国内において暗号資産現物の保有が広がり、保有期間の長期化傾向が強まるなど、市場環境が整いつつあります。
SBIが計画する暗号資産ETF商品
SBIホールディングスは、2026年3月期第1四半期の決算説明会において、複数の暗号資産関連商品の組成予定を報告しました。その中心となるのが、以下の2つの商品です。
SBI・ビットコイン/XRP ETF
東証上場を予定している「SBI・ビットコイン/XRP ETF」は、ビットコインとXRPという2つの主要な暗号資産を投資対象とするETFです。この商品により、投資家は証券口座を通じて、これらの暗号資産に直接投資することが可能になります。従来の暗号資産取引所での取引と異なり、証券取引所での売買となるため、より多くの投資家にとってアクセスしやすい形態となります。
SBI Fund of 暗号資産ETFs
国内公募投信として組成予定の「SBI Fund of 暗号資産ETFs」は、ユニークな資産配分戦略を採用しています。この商品は、金(ゴールド)ETFに51%以上の資産を配分し、フランクリン・ビットコイン・ETF(EZBC)等の暗号資産ETFに49%以下の資産を配分する構成となっています。この配分により、伝統的な資産である金と、新興資産である暗号資産の両方のメリットを享受することができます。分配金と運用損益を通じて、投資家にリターンをもたらす設計となっています。
ビットコインETFの基本的な特徴と利点
ビットコインETFが注目される理由は、従来の暗号資産投資と比較して、複数の利点があるからです。
取引の利便性と安全性
ビットコインETFは、従来の証券取引所で株式のように売買できるため、通常の証券口座を通じてビットコインに投資できます。現物のビットコインを個別に保管・管理する手間が省けるため、セキュリティ面での負担が軽減されます。初心者でも安心してビットコインに投資できる環境が整備されるのです。
ポートフォリオ分散の効果
ビットコインETFが登場することで、投資家は株式や債券、不動産(REIT)、コモディティ(金や原油)など、従来の資産クラスに加え、新たに暗号資産を証券口座内で取り扱えるようになります。ビットコインは他の資産クラスと異なる資産のため、ポートフォリオにビットコインETFを組み入れることで、分散効果が期待できます。これにより、全体的なポートフォリオのリスク低減と、暗号資産からのリターン獲得の両立が可能になります。
現物型と先物型のビットコインETFの違い
ビットコインETFには、大きく分けて2つのタイプが存在します。それぞれの特徴を理解することは、投資判断において重要です。
現物型ビットコインETF
現物型は、実際のビットコインを保有し、その価格に連動するように設計されています。裏付けとなるビットコインを保管しているため、現物のビットコイン価格との乖離は小さいという特徴があります。アメリカでは2024年1月にSECの承認を受けました。価格の乖離リスクが低いため、より正確にビットコインの価格動向を追跡したい投資家に適しています。
先物型ビットコインETF
先物型は、ビットコインの先物契約(デリバティブ)を投資対象としています。先物市場の価格に連動するため、現物価格と乖離する場合があります。アメリカでは2021年10月にSECの承認を受けました。先物価格と現物価格の乖離リスクが存在するため、投資家はこの点を理解した上で投資判断を行う必要があります。
国内での暗号資産ETF組成に向けた制度整備
SBIを含む複数の企業が参加する「国内暗号資産ETF勉強会」は、国内での暗号資産ETF組成を実現するために必要な制度改革について提言をまとめました。
提言の主要な内容
提言では、以下の3つの重要な項目が掲げられています。第一に、暗号資産ETF等の組成等を可能とする諸制度の整備を進めるべきという点です。現在、投資信託の投資対象資産である特定資産に暗号資産が含まれていないため、暗号資産を投資対象とするETFについて組成ができない状況にあります。この制度的な障壁を取り除く必要があります。
第二に、暗号資産ETF等および暗号資産の現物取引について申告分離課税とすべきという点です。税制の明確化と統一化により、投資家にとってより投資しやすい環境が整備されます。
第三に、暗号資産ETF等の組成等に係る議論の対象として主要な暗号資産を優先すべきという点です。ビットコインやXRPなど、時価総額が大きく、市場が成熟している暗号資産から段階的に進めることが提案されています。
ETFフローと暗号資産市場への影響
ビットコインETFの登場は、暗号資産市場全体に大きな影響を与えています。特に「ETFフロー」という概念が、2024年以降の暗号資産価格動向において重要な役割を果たすようになりました。
ETFフローとは
ETFフローとは、現物ETFへの資金流入と流出を指します。2024年にアメリカでビットコインのETFが承認されたことで、これまで暗号資産を購入する投資家が個人中心だったのに対し、機関投資家も購入するようになりました。個人の裾野が広がった側面もあり、暗号資産取引所口座を開かずとも証券口座からETFを購入すればビットコインのエクスポージャーを持てるようになったことが大きいのです。
ETFフローの仕組み
ビットコインETFは、需要が強いとAP(Authorized Participant)が現物バスケットを差し入れて新規にETF口数を新規発行し、弱いと現物を引き取って償還します。この仕組みによってETF価格は原資産に連動し、フローは現物サイドの純買い/純売り圧力として価格に波及します。つまり、ETFへの資金流入が増加すれば、ビットコイン現物の買い圧力が高まり、価格上昇につながる可能性があるのです。
SBIの暗号資産関連投資戦略
SBIホールディングスは、暗号資産ETFの組成だけでなく、より広範な暗号資産関連投資戦略を展開しています。
SBI 次世代テクノロジー株式ファンド
SBIは、Web3・量子・核融合などの革新技術を有する企業へ投資するテーマ型ファンド「SBI 次世代テクノロジー株式ファンド」の設定を決定しました。このファンドでは、Web3や量子コンピューター、核融合関連、ウォレット/電子決済、暗号資産保有企業、暗号資産取引所の株式に投資します。サークル(Circle)やストラテジー(Strategy)、ブロック(Block)、コインベース(Coinbase)、OSLグループといった企業が投資対象に含まれています。
ブロックチェーン関連投資
SBIは、暗号資産そのものへの投資だけでなく、ブロックチェーン技術を活用する企業への投資も推進しています。例えば、「インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド」(愛称:世カエル)は、暗号資産関連企業のみならず、ブロックチェーン関連の幅広い企業の株式に投資を行っています。このように、暗号資産エコシステム全体への投資を通じて、多角的なリターン獲得を目指しています。
投資家にとっての暗号資産ETFの意義
暗号資産ETFの登場は、投資家にとって複数の意義を持っています。
アクセス性の向上
従来、暗号資産への投資には、暗号資産取引所での口座開設が必要でした。しかし、ETFの登場により、既存の証券口座を通じて投資が可能になります。これにより、証券投資に慣れた投資家が、より簡単に暗号資産へのエクスポージャーを持つことができるようになります。
規制下での安心感
ETFは証券取引所に上場している金融商品であり、証券取引所と取引を仲介してくれる証券会社の監督下にあります。このため、暗号資産取引所での取引と比較して、より規制された環境での投資が可能になります。
機関投資家の参入
ETFの登場により、機関投資家も暗号資産市場に参入しやすくなりました。これにより、市場の流動性が向上し、より安定した価格形成が期待できます。
金融庁の制度検討と今後の展望
国内での暗号資産ETF組成を実現するためには、金融庁による制度整備が不可欠です。金融庁は、暗号資産を金融商品として扱う法制度の検討に乗り出しており、制度が整い次第、具体的な商品化に踏み切る構えを見せています。
SBIホールディングスは、この制度整備の動きを注視しながら、暗号資産ETFの開発を進めており、国内での上場を視野に入れています。制度が整備されれば、SBIが計画している「SBI・ビットコイン/XRP ETF」や「SBI Fund of 暗号資産ETFs」といった商品が、実際に市場に登場する可能性が高まります。
暗号資産を「無国籍アセット」として捉える視点
暗号資産は、特定の国家や中央銀行に依存しない「無国籍アセット」として捉えられるようになってきました。この視点は、投資戦略において重要な意味を持っています。
2024年1月に米SECが現物ビットコインETFを承認したことで、長年のボトルネックだったアクセス手段が規制下で整備されました。これにより、伝統的な証券口座からワンクリックで無国籍アセットへのアクセスが可能になったのです。
グローバル化が進む現代において、国家や通貨に依存しない資産を保有することは、ポートフォリオの多様化とリスク管理の観点から、ますます重要になってきています。暗号資産ETFは、このような投資ニーズに応える手段として機能するのです。
XRP ETFの動向と市場の拡大
ビットコインETFに続いて、XRP(リップル)のETFも市場で注目を集めるようになってきました。XRP ETFは記録的な好調を示しており、暗号資産ETF市場の拡大を象徴しています。
SBIが計画している「SBI・ビットコイン/XRP ETF」は、このようなXRP市場の成長を背景に、ビットコインとXRPの両方を投資対象とする設計になっています。複数の暗号資産を組み合わせることで、投資家により多くの選択肢と分散効果をもたらすことが期待されています。
投資信託とETFの選択肢の拡大
SBIが計画している暗号資産関連商品は、投資信託とETFの両方を含んでいます。これにより、投資家はより多くの選択肢の中から、自分の投資スタイルに合った商品を選ぶことができるようになります。
投資信託は、ファンドマネージャーによる運用が行われ、分配金の受け取りなど、より多くの機能を備えています。一方、ETFは証券取引所での売買が可能であり、より流動性が高く、リアルタイムでの価格変動に対応できます。投資家の投資目的やリスク許容度に応じて、最適な商品を選択することが可能になるのです。
暗号資産市場の成熟化と制度整備の必要性
暗号資産市場が成熟化するにつれて、より多くの投資家が参入するようになってきました。このような市場の成長に対応するためには、適切な制度整備が不可欠です。
SBIを含む業界関係者が提言している制度改革は、暗号資産市場の健全な発展を促進するためのものです。税制の明確化、投資対象資産への暗号資産の組み入れ、規制環境の整備など、複数の側面での改革が必要とされています。
これらの制度整備が進むことで、より多くの投資家が安心して暗号資産に投資できる環境が整備されるでしょう。同時に、市場の透明性と信頼性も向上し、暗号資産市場全体の発展につながることが期待されています。
まとめ
SBIホールディングスが進める暗号資産ETF組成は、国内の投資市場における重要な転換点を示しています。ビットコインやXRPといった主要な暗号資産を投資対象とするETFの登場により、より多くの投資家が証券口座を通じて暗号資産に投資できるようになります。現物型ETFの採用により、価格の正確な連動性が確保され、投資家にとってより信頼性の高い投資手段が提供されるでしょう。金融庁による制度整備の進展に伴い、SBIが計画している複数の暗号資産関連商品が実現される可能性が高まっています。暗号資産を「無国籍アセット」として捉え、ポートフォリオの分散化を図る投資家にとって、これらの商品は重要な選択肢となるでしょう。
SBIが仕掛ける暗号資産ETFの全貌:ビットコイン/XRPの東証上場と金×暗号の新ファンドをまとめました
暗号資産ETF SBIについての理解を深めることは、現代の投資戦略において重要です。SBIホールディングスが展開する「SBI・ビットコイン/XRP ETF」や「SBI Fund of 暗号資産ETFs」といった商品は、国内投資家にとって新たな投資機会をもたらします。これらの商品により、証券口座を通じた簡便な暗号資産投資が可能になり、ポートフォリオの多様化が実現されるでしょう。金融庁の制度整備が進むにつれて、暗号資産ETF市場はさらに拡大し、より多くの投資家にとってアクセス可能な投資対象となっていくことが期待されています。暗号資産への投資を検討する投資家にとって、SBIが提供する暗号資産ETFは、規制下での安心感と利便性を兼ね備えた選択肢として、今後ますます重要な役割を果たしていくでしょう。



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