「中国 仮想通貨 禁止」というキーワードは、日本の投資家や暗号資産に関心のある方にとって、常に注目度の高いテーマです。中国はかつて世界最大級のビットコインマイニング拠点であり、取引量も非常に多かった一方で、近年は規制強化と「全面禁止」という方針が繰り返し発表されてきました。そのため、「本当にすべて禁止なのか」「今はどういう状態なのか」「なぜ中国はここまで規制を強めるのか」といった点が気になる方も多いはずです。
本記事では、中国における仮想通貨(暗号資産)規制の流れや、2021年以降の「全面禁止」の内容、2026年に向けた最新の動き、そして中国独自のデジタル人民元との関係などを、できるだけ分かりやすく整理して解説します。批判的な視点ではなく、「なぜそうした政策がとられているのか」「そこから何を学べるのか」といった、読者にとって前向きで役に立つ情報に焦点を当てていきます。
中国は仮想通貨を本当に「全面禁止」したのか
中国の仮想通貨規制について語る上で、まず押さえておきたいのが、2021年9月以降の大きな方針転換です。中国人民銀行(中央銀行)は、公安部や最高人民法院など多数の政府機関と連携し、ビットコインなどの暗号資産に関わるさまざまな活動を「違法な金融活動」に位置づけました。その中には、以下のような行為が含まれています。
- 中国国内での仮想通貨取引サービスの提供
- 仮想通貨取引所の運営や、取引仲介サービス
- 取引プラットフォームを通じた法定通貨と仮想通貨の交換
- 仮想通貨のマイニング(採掘)事業の運営
- 仮想通貨関連のプロモーションや、違法な資金調達行為
この方針により、中国本土では暗号資産取引とマイニングが「全面的に禁止されている」と整理されています。実際に、各省や自治体レベルでマイニング施設の停止が進められ、多くの事業者が国外に拠点を移転しました。
同時に、中国人民銀行は会議や通知を通じて、仮想通貨を使ったマネーロンダリングや詐欺、違法な海外送金への懸念を繰り返し表明し、金融の安定と社会秩序を守るために取り締まりを徹底する姿勢を示しています。これは、単なる資産クラスとしての仮想通貨ではなく、「国境を越えて迅速に動く資金の経路」としての側面に、強い警戒を払っていることの表れだといえます。
中国仮想通貨禁止の歴史:段階的な規制強化の流れ
2021年の全面禁止は突然決まったわけではなく、2010年代から徐々に規制が強化されてきた結果として位置づけられます。ここで、主な流れを整理しておきましょう。
初期のブームと取引所規制
ビットコインが世界的に広まり始めた2010年代前半、中国は早い段階から大きな存在感を示しました。電気料金の安さやハードウェア製造の強みを背景に、マイニング事業者が集まり、取引所も数多く立ち上がりました。
しかし、投機的な取引の急増や価格変動の大きさを受けて、当局は金融リスクを抑える目的で段階的に規制に動きます。具体的には、銀行や決済機関による仮想通貨関連サービスの提供を制限したり、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)の禁止を打ち出したりといった措置が講じられました。この時点で、「法定通貨との交換を仲介するビジネス」や、「新しいトークンを発行して資金を集める行為」に対して厳しい姿勢が示されています。
マイニング大国からの転換
その後も中国はビットコインマイニングにおける世界トップクラスの地位を維持していましたが、エネルギー消費や環境への影響、さらには金融面でのリスクを理由に、マイニング事業への規制が強化されていきます。2021年に入ると、内モンゴル自治区などでマイニング施設に対する取り締まりが本格化し、その動きが他地域にも広がりました。
最終的に、2021年9月の方針でマイニングは「全面禁止」という位置づけになり、多くの事業者がカザフスタンや北米など国外に拠点を移す流れが加速しました。一方で、報道ベースでは、その後も一部地域でマイニングが再開され、中国が世界的に見て依然として大きなマイニング拠点としてカウントされているという調査も出ています。これは、規制の網をかいくぐる動きが一定程度存在していることを示しており、当局はこうした動きに対しても監視と取り締まりを続ける方針を明確にしています。
2021年の「違法な金融活動」指定
2021年9月の大きな転機では、中国人民銀行が公安部や金融監督当局など複数の機関と「仮想通貨取引の投機リスクに関する会議」を開催し、暗号資産関連の活動を明確に「違法な金融活動」であると宣言しました。この時点で、海外の取引所を利用する中国本土のユーザーに対しても、厳しい制限と監視を行う方針が打ち出されています。
このように、中国は段階を追って規制を強化し、最終的に「国内における仮想通貨ビジネスは原則として認めない」という明確なメッセージを出すに至りました。
なぜ中国は仮想通貨を禁止したのか:主な理由と背景
中国の仮想通貨禁止は、単純に「仮想通貨が嫌いだから」という理由ではなく、複数の政策目的と密接に結びついています。ここでは、よく指摘される主な背景を、ポジティブな側面も含めて紹介します。
1. 金融安定とシステミックリスクの回避
最も大きな理由の一つは、金融システム全体の安定性を守るという観点です。ビットコインをはじめとする多くの暗号資産は価格変動が大きく、短期間で急騰・急落することがあります。こうした資産への投機が一般の個人や企業レベルで広がると、信用取引や借入を通じて金融システムに大きな影響が出る可能性があります。
中国当局は、過度なレバレッジを伴う投機を抑制し、不測の事態で銀行や決済システムに波及するリスクを避けるため、規制を強化していると説明しています。これは、国内経済の安定と成長を重視する政策と一貫しており、仮想通貨だけでなく不動産やシャドーバンキングなどに対する規制強化とも連動した動きと捉えることができます。
2. マネーロンダリング・詐欺対策
仮想通貨は、国境を越えて迅速に送金できる利便性がある一方で、匿名性を悪用したマネーロンダリングや詐欺、違法ギャンブルなどに利用されるケースも世界的に報告されています。中国でも、オンライン詐欺や海外投資名目の資金流出などに仮想通貨が関わっている事例が問題視されてきました。
そのため、中国人民銀行や公安当局は、仮想通貨を用いた違法行為の取り締まりを重点課題と位置づけています。2025年には詐欺やギャンブル関連の資金の流れの管理を強化したことが報告されており、2026年以降も仮想通貨を利用した違法犯罪への監視を続ける方針が示されています。こうした動きは、一般の消費者や投資家を詐欺から守るという観点からも、一定の保護効果が期待できるものです。
3. 資本流出と為替管理の観点
中国は、資本取引や外貨の流出に対して一定の管理を行う体制を維持しています。仮想通貨は、国境を越えた資金移動を容易にし、従来の為替管理の枠組みを通らない形で資本が移動する可能性を持っています。そのため、仮想通貨を通じた資本流出や不透明な海外投資に対して、当局が強い警戒感を抱いているのは自然な流れだといえます。
特に、海外取引所の利用やP2P取引などは、既存の金融規制の枠外で資産を移転する手段となりうるため、これを抑制することは中国の通貨主権や為替政策を維持する上で重要と位置づけられています。
4. デジタル人民元(e-CNY)との関係
中国の仮想通貨禁止を理解する上で欠かせないのが、中央銀行デジタル通貨(CBDC)である「デジタル人民元(e-CNY)」の存在です。中国人民銀行は、世界に先駆けてデジタル通貨の実証実験と導入を進めており、国内外での利用拡大を目指しています。
デジタル人民元の目的には、キャッシュレス化の推進、決済インフラの高度化、金融包摂の改善などが含まれますが、同時に、通貨発行権と決済データを国家レベルで把握・管理する仕組みを整えるという側面もあります。この文脈で見ると、民間が発行する暗号資産やステーブルコインが大規模に普及することは、政策目標と競合しうる要素と考えられます。
そのため、中国はステーブルコインについてもリスクを指摘し、デジタル人民元の優位性を確保する方針を示しています。これは、国として一貫したデジタル通貨戦略を進めるための選択ともいえます。
2026年に向けた最新動向:監視強化と違法取引への対策
2021年に「全面禁止」が打ち出された後も、中国の動きは止まっていません。むしろ、仮想通貨を利用した違法行為や規制逃れが依然として存在していることを背景に、監視と取り締まりの強化が続けられています。
中国人民銀行は、2026年の重点業務として「仮想通貨取引の監視強化」を明確に掲げました。これは、2025年にかけて進めてきた詐欺・ギャンブル関連資金の管理強化を総括した上で、今後も継続して取り組む分野として位置づけられています。具体的には、以下のような方向性が挙げられています。
- 仮想通貨を利用した違法な資金移動やマネーロンダリングの摘発
- 海外取引所の利用やオフショア構造を通じた規制回避への対策
- 仮想通貨を使った詐欺、違法勧誘、ねずみ講的スキームなどの抑止
- マイニング活動の再開動向に対する監視と、必要に応じた取り締まり
一方で、中国は国際的な金融ネットワークの中で人民元のクロスボーダー利用を拡大することも重視しており、デジタル人民元や関連インフラの整備を着実に進める方針を示しています。これは、仮想通貨そのものを禁止する一方で、「国家が管理する形でのデジタル通貨・デジタル決済を積極的に育成する」という戦略といえます。
RWAトークン化やWeb3への姿勢:禁止の範囲はどこまでか
中国の規制は、ビットコインなど既存の暗号資産だけでなく、最近注目されている新しいトレンドにも及んでいます。その一つが、「RWA(Real World Assets:実世界資産)のトークン化」です。これは、不動産や債券、商品(コモディティ)など、現実世界の資産をブロックチェーン上のトークンとして表現する取り組みを指します。
中国の主要な金融業界団体は、このRWAトークン化を「違法な金融活動」に分類し、国内外の事業者に対して警告を発しました。通知では、RWAトークン化がステーブルコインや仮想通貨マイニングと同様に、現行法の下で禁止されているカテゴリーに属すると位置づけられています。
また、中国の証券規制当局は、香港におけるRWAトークン化ビジネスに関与しないよう国内証券会社に求めるなど、オフショア構造を使った迂回に対しても慎重な姿勢を見せています。これにより、中国本土は「規制の明確化を待つ地域」ではなく、「現時点でこうした活動を認めない地域」であることをはっきり示しています。
このように、中国はWeb3やトークン化といった新領域に対しても慎重なスタンスを取る一方で、ブロックチェーン技術そのものの研究や、デジタル人民元を通じた実用的なデジタル金融インフラの整備には積極的です。つまり、「民間発の投機的なトークンビジネス」は抑制する一方、「国家主導のデジタル金融イノベーション」は推進するという、メリハリの効いた方向性が見えてきます。
中国仮想通貨禁止がもたらした影響
中国の仮想通貨禁止は、国内だけでなく、世界の暗号資産市場や関連ビジネスにも大きなインパクトを与えました。ここでは、その主な影響を整理してみます。
マイニング拠点の移転と分散
かつて中国は、世界のビットコインハッシュレート(マイニング計算能力)の過半数を占めるといわれた時期もありました。しかし、マイニング禁止により、多くの事業者がカザフスタン、米国、カナダなどへ設備を移しました。これにより、マイニングの地理的分散が進み、特定の国に集中していたリスクが一定程度緩和されたと評価する見方もあります。
他方で、一部報道では、中国国内でマイニングが水面下で再開されている地域もあるとされており、規制と実態の間にギャップがあることも指摘されています。これに対して中国当局は、こうした動きは公式な方針に反するものであり、引き続き監視・取り締まりを強化する考えを示しています。
取引所ビジネスの再編
中国系の仮想通貨取引所の多くは、規制強化を受けて本土から拠点を移し、香港やシンガポール、その他の地域でサービスを展開するようになりました。ユーザーも、VPNなどを用いて海外取引所を利用するケースが報じられていますが、これは当局が繰り返し注意喚起し、違法な金融活動として位置づけている領域です。
取引所にとっては、規制が比較的明確でビジネスが許容されている国・地域に拠点を置くことが、中長期的な成長戦略として重要になっています。また、規制遵守やコンプライアンスの体制を整えることが、信頼性向上の鍵となってきました。
投資家保護とリスク認識の高まり
中国における厳格な規制は、一方で、過度な投機や詐欺的なビジネスから一般消費者を守るという側面も持っています。特に、ICOブームの時期には、実態の不明なトークン販売や、誇大広告による資金集めが世界的に問題となりました。その後の規制によって、多くの国・地域でプロジェクトの透明性や投資家保護が重視されるようになったのは、国際的な潮流といえます。
中国のケースは、「新しい技術をどう受け止め、健全な形で取り入れていくか」という点で、多くの国にとって一つの参考事例にもなっています。全面禁止という選択をとるかどうかは別としても、リスク管理の重要性や、一般投資家に対する情報提供のあり方など、学べる点は少なくありません。
ポジティブに捉える中国の仮想通貨禁止:何が学べるか
中国の仮想通貨禁止は、表面的には「ネガティブなニュース」と捉えられがちですが、視点を変えると、いくつかのポジティブな学びを提供してくれます。ここでは、そのうち特に重要なポイントを紹介します。
1. リスク管理の重要性を改めて認識できる
暗号資産市場は、急速な技術革新と価格変動の大きさが特徴であり、魅力と同時にリスクも内包しています。中国のように国家レベルで強い措置を講じるケースは極端に見えるかもしれませんが、「新しい金融技術には慎重なリスク管理が必要」というメッセージは、国・企業・個人のいずれにとっても有益です。
これを踏まえれば、どの国の投資家であっても、自身のリスク許容度や情報収集の姿勢を見直すきっかけになります。例えば、プロジェクトの透明性や規制環境を丁寧に確認する、詐欺的な勧誘に注意する、といった意識は、長期的な資産形成を考える上で非常に重要です。
2. 国家によるデジタル通貨戦略の可能性
中国は、民間が発行する仮想通貨には厳しい姿勢を取る一方で、デジタル人民元の開発・普及には積極的です。これは、「通貨と決済インフラは国家の重要なインフラであり、一定の公的な管理の下で発展させるべき」という考え方に基づいています。
このアプローチは、多くの国が検討を進めている中央銀行デジタル通貨(CBDC)の議論にもつながります。中国の経験を通じて、CBDCが決済効率の向上や金融包摂の改善にどのように役立つのか、そして民間のデジタル資産とどのように共存しうるのか、という点を考える材料が増えているといえます。
3. 技術と規制のバランスというテーマ
ブロックチェーン技術やWeb3の発展は、金融以外の分野にも多くの可能性をもたらしています。中国は、トークンビジネスなどへの規制は厳しい一方で、ブロックチェーン技術の研究開発や応用分野(サプライチェーン管理、電子証書、デジタルアイデンティティなど)に関しては前向きな取り組みを進めています。
このことは、「技術そのもの」と「それを使った金融商品・投資商品」を分けて考える必要性を示しています。各国が自国の状況に合わせてバランスを模索していく中で、中国の事例は一つの極端なケースとして、議論の材料を提供しています。
中国仮想通貨禁止を理解するためのチェックポイント
ここまでの内容を踏まえ、中国の仮想通貨禁止について理解する際に押さえておきたいポイントを、整理しておきます。
- 2021年9月以降、中国本土では仮想通貨取引とマイニングが「全面禁止」という位置づけになっている
- 仮想通貨関連の活動は「違法な金融活動」と定義され、マネーロンダリングや詐欺、違法な海外資金移転などの観点から厳しく取り締まられている
- 2026年に向けて、中国人民銀行は仮想通貨取引の監視強化を引き続き重点業務として掲げている
- デジタル人民元(e-CNY)は積極的に推進されており、民間の仮想通貨とは対照的な扱いを受けている
- RWAトークン化や一部のWeb3関連ビジネスも、違法な金融活動として警告の対象となっている
- 一方で、ブロックチェーン技術自体や、国家主導のデジタル金融インフラには前向きな姿勢が見られる
中国のケースを知ることで、暗号資産やデジタル通貨をめぐる世界の規制動向を、より立体的に捉えることができるようになります。
中国仮想通貨禁止と今後の国際的な動き
最後に、中国の仮想通貨禁止が、今後の国際的な議論や動きにどのような影響を与えうるかについても簡単に触れておきます。
世界各国は、仮想通貨やステーブルコイン、DeFi(分散型金融)などの急速な発展を受けて、共通のルールづくりや国境を越えた協力体制の構築を進めています。マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)、消費者保護、金融システムの安定といった課題は、どの国にとっても共通です。
中国のように、厳格な規制を採用する国がある一方で、適切な枠組みの中でイノベーションを促進しようとする国もあります。重要なのは、それぞれの国が自国の経済・社会状況やリスク許容度に応じたアプローチをとりつつ、国際的な協調を保っていくことです。
その意味で、中国の仮想通貨禁止は、「極端なケース」として他国の政策議論に影響を与えつつ、同時に、CBDCやデジタル金融インフラの先行事例として、多くの学びを提供しているといえるでしょう。
まとめ
中国の仮想通貨禁止は、単なる「仮想通貨が禁止された国」という一言では語りきれない、多層的な背景と狙いを持った政策です。中国本土では2021年9月以降、仮想通貨取引やマイニング、RWAトークン化などが「違法な金融活動」と位置づけられ、国内の事業者や個人に対する厳格な規制が敷かれています。その背景には、金融システムの安定確保、マネーロンダリングや詐欺への対策、資本流出の抑制、そしてデジタル人民元を中心とする国家主導のデジタル通貨戦略など、複数の政策目的があります。
同時に、中国はブロックチェーン技術そのものやデジタル金融インフラの整備には積極的であり、「民間の投機的なトークンビジネス」と「国家が管理するデジタル通貨・デジタル決済」を明確に区別しています。この姿勢は、他国が自国の規制やデジタル通貨戦略を考える上でも、貴重な参考事例となっています。読者にとっては、中国の動きを通じて、暗号資産のリスク管理の重要性や、技術と規制のバランスをどのように取るべきかを考えるきっかけになるでしょう。
中国は仮想通貨を本当に「全面禁止」したのか?2021〜2026の規制変化とデジタル人民元の狙いを徹底解説をまとめました
本記事では、「中国仮想通貨禁止」というテーマについて、歴史的な経緯から最新の監視強化の動き、デジタル人民元やRWAトークン化への対応まで、幅広く解説しました。中国本土では仮想通貨関連のビジネスが厳しく制限されている一方で、国家主導のデジタル通貨戦略やブロックチェーン応用は前向きに展開されています。このコントラストを理解することで、単に「禁止された」という表面的な印象にとどまらず、「なぜそのような選択がなされ、そこから何を学べるのか」というより深い視点を持つことができます。今後も各国の規制や技術革新の動向に注目しながら、自身にとって有益な情報を見極めていくことが大切です。



人気記事