イーサリアム(ETH)の発行枚数とは?基本をわかりやすく解説
イーサリアム(ETH)は、ビットコインに次ぐ時価総額を誇る暗号資産であり、スマートコントラクトやDeFi(分散型金融)の基盤として広く利用されています。イーサリアムの発行枚数は、投資判断やETHの将来的な価値を考えるうえで非常に重要な指標です。
2026年4月時点で、イーサリアムの総供給量(流通枚数)は約1億2,069万ETHとなっています。この数字は日々変動しており、新規発行とバーン(焼却)のバランスによって増減を繰り返しています。
イーサリアムが他の暗号資産と大きく異なるのは、発行上限が設定されていないという点です。ビットコインが2,100万枚という厳格な上限を持つのに対し、イーサリアムには理論上の発行上限が存在しません。しかし、それは「無制限に増え続ける」ということを意味するわけではありません。後述するさまざまなメカニズムにより、供給量は高度にコントロールされています。
イーサリアムの発行枚数の推移
イーサリアムは2015年7月にローンチされ、初期には約7,200万ETHがプレセールで配布されました。その後、マイニング報酬として新たなETHが日々発行され、供給量は増加の一途をたどっていました。
しかし、2021年以降のアップデートにより状況は一変します。供給量の増加ペースは大幅に鈍化し、一時期はむしろ減少する局面さえ見られるようになりました。現在の約1億2,069万ETHという総供給量は、こうした複雑な発行・焼却メカニズムの結果として形成されたものです。
イーサリアムに発行上限がない理由
ビットコインの発行上限は、デジタルゴールドとしての希少性を担保するために設計されたものです。一方、イーサリアムは通貨としての側面だけでなく、ネットワークの「燃料」としての機能を持っています。スマートコントラクトの実行やトランザクションの処理には必ずETHが必要であり、ネットワークが稼働し続ける限りETHの需要は発生します。
発行上限を設けない設計思想
イーサリアムの創設者であるヴィタリック・ブテリン氏は、発行上限を設けないことには明確な意図があるとしています。その主な理由は以下の通りです。
ネットワークセキュリティの維持:イーサリアムのネットワークを安全に運用するためには、バリデータ(検証者)に報酬を支払い続ける必要があります。発行上限を設けると、将来的にバリデータへのインセンティブが不足し、ネットワークのセキュリティが低下するリスクがあります。
柔軟な金融政策:発行上限がないことで、ネットワークの状況や需要に応じて柔軟に供給量を調整できます。これにより、急激なデフレーションやインフレーションを避け、安定したエコシステムの運用が可能になります。
年間発行量の上限:発行上限がないとはいえ、イーサリアムの年間新規発行量には制限が設けられています。かつてPoW時代にはマイニング報酬として毎日約13,000ETHが発行されていましたが、現在のPoS方式ではバリデータ報酬として1日あたり約1,600ETH程度と大幅に削減されています。
EIP-1559とバーン(焼却)機構の仕組み
イーサリアムの供給量を語るうえで欠かせないのが、EIP-1559というアップグレードです。2021年8月に実施された「ロンドンアップデート」で導入されたこの仕組みは、イーサリアムの経済モデルを根本から変えました。
EIP-1559で何が変わったのか
EIP-1559の導入以前、イーサリアムのトランザクション手数料(ガス代)はすべてマイナーに支払われていました。しかしEIP-1559導入後は、手数料の構造が以下のように変更されました。
ベースフィー(基本手数料):ネットワークの混雑状況に応じて自動的に決定される手数料です。この部分はバーン(焼却)されます。つまり、ブロックチェーン上から永久に消滅し、誰の手にも渡りません。
プライオリティフィー(優先手数料):ユーザーがトランザクションの優先処理を希望する場合に上乗せする手数料で、こちらはバリデータへの報酬として支払われます。
バーン量の実績
EIP-1559が稼働した2021年8月から2026年2月までの間に、累計約460万ETHがバーンされました。これは当時の価格換算で90億ドル(約1兆3,500億円)以上に相当する莫大な量です。
バーンされたETHは永久に流通から除外されるため、新規発行されたETHの一部を相殺する効果があります。ネットワークの利用が活発であるほどベースフィーが上昇し、より多くのETHがバーンされる仕組みになっています。このため、ネットワークの需要が高い時期にはETHの供給量が減少する「デフレ」状態が発生することもあります。
The Merge(マージ)による発行量の劇的な変化
2022年9月15日に実施された「The Merge(ザ・マージ)」は、イーサリアムの歴史上もっとも重要なアップグレードのひとつです。この更新により、イーサリアムの合意形成メカニズムがPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)に移行しました。
発行量が約90%削減
The Mergeの最大の影響は、新規ETH発行量の劇的な削減です。PoW時代には、マイナーへの報酬として1日あたり約13,000ETHが発行されていました。しかしPoSへの移行後、バリデータ報酬として発行されるのは1日あたり約1,600ETH程度に抑えられており、約88%もの発行量削減が実現されています。
この劇的な発行量の削減は「トリプル・ハルヴィング」とも呼ばれており、ビットコインの半減期3回分に相当するインパクトがあるとされています。
エネルギー消費の大幅削減
PoSへの移行によって、イーサリアムネットワークのエネルギー消費は約99.95%削減されたと報告されています。これはESG投資の観点からもポジティブな変化であり、環境負荷を懸念する機関投資家の参入を促す要因のひとつとなっています。
イーサリアムの供給量の現状と市場動向
2026年現在、イーサリアムの供給構造はさまざまな側面から注目されています。ここでは最新のデータをもとに、現在の市場動向を解説します。
現在のインフレ率
2026年2月時点で、イーサリアムの年間純インフレ率は約0.23%とされています。これは極めて低い水準であり、従来のPoW時代と比較すると劇的に改善されています。
ただし、2024年3月に実施されたDencunアップグレードによってレイヤー2のトランザクションデータがオフチェーンに移行したため、メインチェーンでのバーン量は以前よりも減少しています。その結果、The Merge以降に約95万ETHの純増が発生しており、一時的にデフレ状態だったETHは再びわずかなインフレ状態に戻っています。
取引所供給量の歴史的低水準
2026年1月時点のデータによると、仮想通貨取引所に保管されているイーサリアムの割合は、全発行枚数の約8.7%という歴史的な低水準に達しています。これは多くのETH保有者がステーキングや長期保有を選択しており、売り圧力が減少していることを示唆しています。
機関投資家の保有状況
2026年2月時点で、トレジャリー企業67社が約566万ETHを保有し、現物ETFが約683万ETHを保有しています。合計すると約1,249万ETHとなり、これは総供給量の10%以上に相当します。機関投資家の参入が加速していることは、ETHが投資対象としての信頼性を高めていることの証といえるでしょう。
ビットコインとイーサリアムの発行枚数を比較
暗号資産への投資を検討する際、ビットコインとイーサリアムの供給メカニズムの違いを理解することは非常に重要です。以下に主要な違いを整理します。
発行上限の有無
ビットコイン(BTC):発行上限は2,100万枚。2024年時点で約1,970万枚が発行済みであり、すべての発行が完了するのは2140年頃と予測されています。4年ごとに半減期(ハルヴィング)が訪れ、新規発行量が半減します。
イーサリアム(ETH):発行上限はなし。ただしPoS移行とEIP-1559バーンにより、実質的な供給増加は極めて限定的です。ネットワーク活動が活発な時期にはデフレとなることもあります。
希少性の確保方法
ビットコインは「固定上限」によって希少性を確保するハードキャップ型です。一方、イーサリアムは上限を設けず、発行量の削減とバーンの組み合わせによって希少性を高めるダイナミック型といえます。
どちらのアプローチが優れているかは一概に言えませんが、イーサリアムの方式はネットワークの利用状況に応じた柔軟な対応が可能であり、エコシステムの持続可能性という観点ではメリットがあるとされています。
投資家への影響
ビットコインは「デジタルゴールド」としての価値保存機能が期待されているのに対し、イーサリアムは「デジタルオイル」として、ネットワークの燃料としての実需に支えられています。発行枚数の違いは、それぞれの暗号資産が持つ性質の違いを反映しているといえるでしょう。
イーサリアムの発行枚数が今後どうなるか
イーサリアムの供給量が今後どのように推移するかは、いくつかの要因によって左右されます。
ネットワーク活動量とバーン率
DeFi、NFT、レイヤー2ソリューションの普及が進み、イーサリアムネットワークの利用が増加すれば、ベースフィーの上昇とともにバーン量も増加します。ネットワーク活動が十分に活発であれば、新規発行量を上回るバーンが発生し、ETHは再びデフレ状態に入る可能性があります。
レイヤー2の発展
Dencunアップグレード以降、レイヤー2(ArbitrumやOptimismなど)のトランザクションコストは大幅に低下しました。これはユーザーにとっては利便性の向上ですが、メインチェーンのバーン量を減少させる側面もあります。今後のアップグレードで、レイヤー2の利用増加がメインチェーンのバーンにどう影響するかは注目すべきポイントです。
ステーキング参加率の変化
PoS方式では、ステーキングされているETHの量によってバリデータ報酬(新規発行量)が変動します。ステーキング参加率が上昇すれば報酬率は低下しますが、ネットワーク全体のセキュリティは向上します。ステーキングに参加しているETHは流通市場から一時的に離脱するため、実質的な流通量が減少し、需給バランスに影響を与えます。
今後のアップグレード
イーサリアムの開発ロードマップには、さらなるスケーラビリティ改善やセキュリティ強化が含まれています。今後のアップグレードでは、シャーディングの実装やプロトレイヤーの改善が予定されており、これらがネットワーク活動やバーン率に影響を与える可能性があります。
イーサリアムの発行枚数を確認する方法
イーサリアムの現在の供給量やバーン状況をリアルタイムで確認したい方には、以下のような方法があります。
主要な確認ツール
Etherscan:イーサリアムの公式ブロックエクスプローラーで、総供給量やトランザクション情報を確認できます。供給量のチャートも公開されており、推移を視覚的に把握することが可能です。
ultrasound.money:EIP-1559導入後のバーン量や現在のインフレ/デフレ率をリアルタイムで確認できるダッシュボードです。ETHの供給量の変動を直感的に理解するのに役立ちます。
Glassnode:オンチェーンデータの分析プラットフォームで、イーサリアムの流通供給量のチャートやステーキングデータなどを確認できます。
CoinGecko / CoinMarketCap:暗号資産の総合情報サイトで、イーサリアムの流通枚数や時価総額をリアルタイムで確認できます。
まとめ
イーサリアムの発行枚数は2026年4月時点で約1億2,069万ETHであり、ビットコインのような固定の発行上限は設けられていません。しかし、EIP-1559によるバーン機構とThe MergeによるPoS移行の2つの大きなアップグレードにより、供給量の増加は極めて抑制されています。新規発行量はPoW時代から約88%削減され、年間インフレ率は約0.23%というわずかな水準です。さらに、取引所への供給量は歴史的低水準にあり、機関投資家やETFによる保有も拡大しています。発行上限がないことはイーサリアムの価値を損なうものではなく、むしろネットワークの持続可能性と柔軟な供給調整を実現するための合理的な設計であるといえるでしょう。
イーサリアム(ETH)の発行枚数は?上限なしの理由とバーン機構を徹底解説をまとめました
イーサリアムの発行枚数は現在約1億2,069万ETHで、ビットコインとは異なり発行上限が設定されていません。ただし、2021年8月のEIP-1559によるバーン機構の導入と、2022年9月のThe MergeによるPoSへの移行によって、供給量のコントロールは高度に行われています。累計約460万ETHがバーンされ、新規発行量は約88%削減されました。取引所供給量は約8.7%と歴史的低水準にあり、機関投資家やETFを含む大口保有者が総供給量の10%以上を保有しています。発行上限がない設計はネットワークのセキュリティと持続性を確保するためのものであり、バーン機構と組み合わせることでETHの希少性は着実に高まっています。



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