※本記事は一般的な情報提供を目的としており、金融アドバイスではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
暗号通貨を売却して利益が出たとき、「どんな税金がかかるのか」「いくらから申告が必要なのか」が気になる方は多いものです。利益が出ること自体は喜ばしい一方で、税金の仕組みを知らないまま放置すると、あとで思わぬ負担に驚くこともあります。ここでは、暗号通貨の売却にまつわる税金の考え方から、利益の計算方法、確定申告の進め方、そして年内にできる工夫まで、順を追って整理していきます。
- 暗号通貨の売却益は原則「雑所得」に区分され、総合課税の対象になる
- 給与所得者は、給与以外の所得が年間20万円以下なら申告不要とされるケースがある
- 税金は「売却」だけでなく「別の通貨との交換」「商品の購入」でも発生しうる
- 利益の計算には「総平均法」と「移動平均法」の2つの方法がある
- 2026年度税制改正大綱で「申告分離課税」への移行方針が示されている
暗号通貨の売却益にはどんな税金がかかる?
暗号通貨(暗号資産)を売却したり使用したりして生じた利益は、事業として行っている場合などを除き、原則として雑所得に区分されます。雑所得は「総合課税」の対象で、給与所得など他の所得と合算したうえで税額が決まる仕組みです。株式投資の利益が一律の税率で計算される「申告分離課税」とは扱いが異なる点が、暗号通貨の税金を考えるうえで最初に押さえておきたいところです。
総合課税では、所得が大きくなるほど税率も段階的に上がる「超過累進課税」が適用されます。そのため、売却益が大きいほど高い税率が適用される構造になっており、所得税と住民税を合わせると、最も高い区分では合計で55%程度に達するケースもあるとされています。
利子所得や事業所得など、他の9種類の所得のいずれにも当てはまらない所得をまとめた区分です。暗号通貨の売却益のほか、副業による収入や年金の一部などもここに含まれることがあります。
税金が発生する4つのタイミング
「現金に換えていないから税金は関係ない」と考えてしまいがちですが、暗号通貨の場合は利益が確定する場面がいくつかあります。代表的なのは次の4つのタイミングです。日本円に出金した瞬間だけが課税対象ではない、という点が見落とされやすい盲点です。
| タイミング | どんなときか |
|---|---|
| 売却したとき | 購入時より高い価格で日本円などに売却し、差額の利益が出たとき |
| 別の通貨と交換したとき | 保有する通貨を別の暗号通貨に交換すると、いったん売却したものとみなされる |
| 商品やサービスの購入に使ったとき | 含み益がある状態で決済に使うと、その時点の利益が対象になる |
| マイニング・ステーキング等で得たとき | 受け取った時点の時価が収入として扱われる |
「ビットコインでイーサリアムを買っただけ」でも、税務上はいったん売却したとみなされます。日本円に換えていなくても利益が確定している場合があるため、取引履歴はこまめに残しておくと安心です。
税率はどのくらい?所得税と住民税の関係
総合課税では、暗号通貨の売却益を含めた課税所得の合計額に応じて、所得税の税率が決まります。所得税は5%から45%までの7段階に分かれており、これに加えて住民税が所得額にかかわらず一律10%かかると考えるとイメージしやすいでしょう。下の表は、所得税の速算的な区分のおおまかなイメージです。
| 課税される所得金額(目安) | 所得税率の目安 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% |
| 4,000万円超 | 45% |
住民税の10%を加えると、最も高い区分では合計55%程度になる計算です。給与など他の所得と合算した総額で区分が決まるため、本業の収入が多い人ほど暗号通貨の利益にかかる税率も高くなりやすい、という関係になっています。
給与所得者の場合、給与以外の所得(雑所得など)が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要とされています。ただし、この基準を下回っても住民税の申告は別途必要になる場合があるため、お住まいの自治体の取り扱いも確認しておくと安心です。
利益の計算方法|総平均法と移動平均法
暗号通貨の利益は、ざっくり言えば「売却価額 − 取得価額(買ったときの値段)− 手数料」で求めます。難しいのは、同じ通貨を何度かに分けて買っているとき、1単位あたりの取得価額をどう計算するかです。ここで使われるのが「総平均法」と「移動平均法」の2つの方法です。
総平均法
1年間に購入した同じ通貨について、購入金額の合計を購入数量の合計で割って、平均の取得単価を出す方法です。1年分の取引がすべて終わってから一度だけ計算するため、計算がシンプルで手間が少ないのが特徴です。年間の取引回数が多い人にとって扱いやすいと評価されています。
移動平均法
通貨を購入するたびに、その時点での平均取得単価を計算し直す方法です。常に最新の取得価額を把握できるため、いまどれくらいの含み益・含み損があるのかを年の途中でも確認しやすいという利点があります。一方で、取引のたびに計算するため手間はやや増えます。
どちらの方法でも、長期的に見れば最終的な所得金額の合計は同じになると言われています。ただし、単年度では金額に差が出ることがあります。一度選んだ計算方法は継続して使うのが原則なので、最初にどちらにするか決めておくとよいでしょう。
確定申告の進め方
暗号通貨の利益で確定申告が必要になった場合、おおまかな流れは次のようになります。期限は原則として翌年の2月中旬から3月中旬までで、この期間内に前年分の所得をまとめて申告します。
- 取引所からの年間取引報告書や取引履歴を集める
- 総平均法または移動平均法で年間の所得金額を計算する
- 給与など他の所得と合算して申告書を作成する
- 所得税の確定申告書を提出し、納税する
複数の取引所を使っていると、履歴が分散して計算が複雑になりがちです。年をまたぐ前に、各取引所から取引履歴をダウンロードして一元管理しておくと、申告期の負担を大きく減らせると評価されています。
知っておきたい注意点
暗号通貨の税金には、株式投資などとは異なるいくつかの特徴があります。利益が出てから慌てないために、あらかじめ知っておくと役立つポイントを整理します。
暗号通貨の損失は、給与所得や事業所得といった他の区分の所得と相殺すること(損益通算)が原則として認められていません。また、損失を翌年以降に持ち越す「繰越控除」も現行制度では使えないとされています。
同じ年の中であれば、暗号通貨の損失と、他の総合課税の対象となる雑所得(一部の副業収入など)との間で相殺できる場合があります。雑所得という同じカテゴリーの中での調整、とイメージするとわかりやすいでしょう。
取得価額のほか、売買にかかった手数料などは必要経費として差し引ける場合があります。どこまでが経費に含まれるかは状況によって異なるため、判断に迷う場合は専門家に相談すると安心です。
年内にできる工夫
税金そのものを避けることはできませんが、年内の取引の組み立て方によって、課税対象となる所得を整える工夫はあります。あくまで一般的な考え方として知っておくとよいでしょう。
含み損のある通貨を年内に売却して損失を確定させれば、同じ年に出た暗号通貨の利益と相殺でき、課税対象となる金額を抑えられる可能性があります。引き続き保有したい銘柄であれば、考え方を整理したうえで判断するとよいでしょう。
給与所得者で副収入が少ない場合、年内の暗号通貨の利益を20万円以下に抑えると、所得税の確定申告が不要になるケースがあります。利益確定のタイミングを年単位で考える視点は持っておくと役立ちます。
これらはあくまで一般的な考え方であり、個々の状況によって最適な対応は変わります。特定の取引を勧めるものではない点に注意し、迷ったときは税理士など専門家に相談するのが確実です。
今後の税制改正の動き
暗号通貨の税金は、今後大きく変わる可能性があると見られています。2025年末に公表された2026年度税制改正大綱では、一定の条件を満たす暗号資産について、現在の総合課税から「申告分離課税」へ移行する方針が示されました。
申告分離課税が導入されると、暗号通貨の利益は他の所得と分けて計算され、株式などと同じように一律20.315%程度の税率が適用される見込みです。あわせて、損失を翌年以降に繰り越す制度や損益通算の仕組みも整えられる方向で検討が進んでいるとされています。
この改正は関連法の改正が前提となるため、実際に適用されるのはもう少し先になると見られています。確定した制度ではなく、今後の動向次第で内容が変わる可能性もあるため、最新の情報を継続的に確認していくことが大切です。
まとめ
暗号通貨を売却して得た利益は、原則として雑所得として総合課税の対象になり、給与など他の所得と合算したうえで税額が決まります。税金が発生するのは売却時だけでなく、別の通貨との交換や商品の購入に使ったときも含まれる点が大きな特徴です。利益は総平均法または移動平均法で計算し、必要に応じて確定申告を行います。損益通算や繰越控除に制限があることや、年間20万円の基準なども押さえておくと、いざというときに落ち着いて対応できます。
暗号通貨の売却にかかる税金の基本|計算方法と確定申告の手順
暗号通貨の売却益は雑所得・総合課税が基本で、税率は所得に応じて段階的に上がります。課税のタイミングは複数あり、計算方法は2種類から選べます。今後は申告分離課税への移行が方針として示されており、制度は変化の途中にあります。取引履歴をこまめに整理し、わからない点は専門家に相談しながら、安心して暗号通貨と付き合っていきましょう。


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