※本記事は一般的な情報提供を目的としており、金融アドバイスではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。また税務上の取り扱いについては、個別のケースに応じて税理士など専門家にご相談ください。
この記事の要点
- 総平均法は、1年間に取得した同じ暗号資産の取得価額の合計を取得数量の合計で割り、平均単価を出す計算方法です
- 計算がシンプルで、年末にまとめて一括計算できる点が大きな魅力です
- もう一方の移動平均法は取引のたびに平均単価を計算し直す方式で、実際の損益感覚に近くなります
- 個人で届出をしない場合は、自動的に総平均法を選んだものとして扱われます
- 一度選んだ評価方法は、原則として一定期間は変更しにくいため、最初の選択が重要です
暗号資産(仮想通貨)の売買やトレードを行うと、利益が出た場合には所得として申告する場面が出てきます。その際に欠かせないのが「取得価額をどう計算するか」という論点です。同じ通貨を複数回に分けて買っていると、1単位あたりいくらで手に入れたのかが曖昧になりがちです。そこで使われるのが総平均法と移動平均法という2つの計算方法です。この記事では、特に名前を選ばなかった人に自動適用される「総平均法」を中心に、仕組みと計算の流れ、移動平均法との違い、選び方のポイントまでをわかりやすく整理します。
暗号資産の総平均法とは
総平均法とは、その年の初めに保有していた暗号資産の評価額と、その年中に新たに取得した暗号資産の取得価額の合計を、保有・取得した総数量で割って平均単価を求める方法です。1年という期間でひとまとめにして平均を取るため、「総平均」という名前が付いています。
たとえば、同じ通貨を1月・5月・10月とバラバラのタイミングで買ったとしても、総平均法ではそれぞれの価格を個別に追いかけません。1年間に投じた金額の合計と、手に入れた数量の合計だけを集計し、最後に一括で平均単価を計算します。この平均単価が、売却したときの取得原価(譲渡原価)として使われます。
ポイント:総平均法は「年単位でまとめて平均する」のが特徴です。期中にいくらの含み益が出ているかをリアルタイムに把握する用途には向きませんが、年に一度の集計で済むため手間を抑えられます。
総平均法の計算式と具体例
総平均法の計算式は、言葉にするととてもシンプルです。
平均単価 =(年初に保有していた暗号資産の評価額 + その年中に取得した暗号資産の取得価額の合計)÷(年初の保有数量 + その年中に取得した数量の合計)
具体的な数字で見てみましょう。ある通貨を以下のように購入したと仮定します。なお、ここで使う金額はあくまで計算の流れを説明するための仮の数値です。
| 購入時期 | 数量 | 購入単価 | 購入金額 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 1.0枚 | 100万円 | 100万円 |
| 5月 | 2.0枚 | 150万円 | 300万円 |
| 10月 | 1.0枚 | 200万円 | 200万円 |
| 合計 | 4.0枚 | - | 600万円 |
この場合、総平均法での平均単価は 600万円 ÷ 4.0枚 = 150万円 となります。仮にこのうち2.0枚を年内に1枚あたり180万円で売却していたとすると、売却額は360万円、取得原価は 150万円 × 2.0枚 = 300万円 なので、利益は60万円という計算です。このように、購入のたびに細かく単価を追わなくても、年間の合計だけで計算できるのが総平均法の流れです。
補足:前年から繰り越した保有分がある場合は、その「年初の評価額」と「数量」を式の先頭に加えて計算します。年をまたいで持ち越すケースが多い人ほど、前年末の単価がそのまま翌年の起点になる点を意識しておくとよいでしょう。
移動平均法との違いを整理
暗号資産の取得価額の計算には、総平均法のほかに移動平均法があります。移動平均法は、暗号資産を購入するたびに、その時点での保有数量と金額から平均単価を計算し直す方法です。取引ごとに単価を更新していくため、売却した時点での損益がより実態に近い形で見えやすいのが特徴です。
| 比較項目 | 総平均法 | 移動平均法 |
|---|---|---|
| 計算のタイミング | 年に一度、まとめて | 購入のたびに都度 |
| 計算の手間 | 少なめ・シンプル | 取引が多いと煩雑 |
| 損益の実感 | 年末まで見えにくい | 取引時点で把握しやすい |
| 届出をしない場合(個人) | こちらが自動適用 | 届出が必要 |
個人の所得税では、評価方法の届出をしなかった場合に総平均法が自動的に適用されるとされています。つまり、特に手続きをしていない多くの人は、知らないうちに総平均法で計算する立場になっている、ということです。
なお、最終的に年間トータルで計算される利益の総額は、どちらの方法でも長い目で見れば一致していくと考えられています。違いが出るのは「どの年にどれだけの利益が計上されるか」というタイミングの問題です。年をまたいで保有を続ける場合、年ごとの計上額に差が生まれる点が両者の本質的な違いといえます。
総平均法のメリット
総平均法が多くの人に使われている背景には、いくつかの分かりやすい利点があります。
総平均法の主なメリット
- 計算がシンプル:年間の購入金額と数量さえ把握できれば平均単価を出せる
- 一括処理ができる:年末にまとめて計算するため、取引のたびに記録を更新する負担が小さい
- 届出が不要な場合がある:個人で何も届け出ていなければ自動的にこの方法になる
- 取引回数が多くても対応しやすい:単価を毎回計算し直す必要がないため、頻繁に売買する人でも集計しやすい
特に「年に数回しか取引しない」「とにかく計算の手間を抑えたい」という人にとっては、総平均法のシンプルさは大きな安心材料になります。表計算ソフトでの一括計算用フォーマットも公的に用意されており、合計値を入力するだけで平均単価が求められるようになっています。
総平均法の注意点
便利な総平均法ですが、知っておきたい注意点もあります。批判すべき欠陥というより、仕組みを理解したうえで使いこなすためのポイントとして押さえておきましょう。
知っておきたいこと:総平均法は年間の平均単価を使うため、実際に売買したタイミングの感覚と計算上の利益がずれることがあります。たとえば、年の前半に安く買って高く売り、後半に高値で買い増した場合、平均単価が押し上げられて計算上の利益が実感より小さく(あるいは大きく)出ることがあります。
このため、期中にどれだけ利益が出ているかをこまめに把握したい人には、総平均法は少し見通しが立てにくい面があります。年末になって初めて確定利益が分かるため、納税資金を計画的に準備したい場合は、年の途中でも概算を意識しておくと安心です。また、年をまたいで保有を続けると、前年末の平均単価が翌年に引き継がれるため、複数年にわたる管理が必要になります。
なお、暗号資産の取引で得た利益は、原則として雑所得として扱われ、総合課税の対象になるとされています。給与など他の所得と合算して税額が決まる仕組みのため、利益額が大きくなりそうな年は早めに見通しを立てておくと落ち着いて対応できます。
評価方法の届出と変更の手続き
総平均法と移動平均法のどちらを使うかは、原則として自分で選んで届け出ることができます。手続きの基本的な流れは次のとおりです。
| 場面 | 手続きの目安 |
|---|---|
| 評価方法を選ぶとき(個人) | 暗号資産を取得した日が属する年分の確定申告期限までに届出 |
| 届出をしなかったとき(個人) | 総平均法が自動的に適用される |
| 方法を変更したいとき | 変更しようとする年の所定の期日までに承認申請が必要 |
重要なのは、一度選んだ評価方法は原則として継続して使うことが求められ、すぐには変更しにくいという点です。変更には承認の手続きが必要で、採用してから一定期間が経過していないと認められにくいとされています。最初の選択がその後しばらく続く前提で考えておくとよいでしょう。
同じ種類の暗号資産は同じ評価方法で一貫して計算するのが基本です。複数の通貨を扱っている場合は、通貨ごとに方法が異なると管理が複雑になるため、自分のスタイルに合わせて方針を整理しておくことが大切です。
総平均法と移動平均法、どちらを選ぶ?
どちらが優れているという単純な話ではなく、自分の取引スタイルに合うかどうかが選び方の軸になります。判断の目安を整理しました。
総平均法が向いている人
- 取引回数が少なく、計算の手間を抑えたい
- 年末にまとめて一括で集計したい
- 特に届出をしておらず、自動適用のままで進めたい
移動平均法が向いている人
- 取引のたびに損益を把握しておきたい
- 売却タイミングを実感に近い数字で判断したい
- 多少手間がかかっても、実態に近い管理をしたい
近年は、取引履歴を取り込んで総平均法でも移動平均法でも自動で損益計算してくれるツールも増えています。手計算が不安な場合はこうした損益計算ツールを活用し、最終的な申告内容は専門家に確認してもらうという進め方が、無理なく続けやすい方法といえます。
確定申告までの流れを押さえる
総平均法を使う場合の大まかな流れは、次のようにイメージするとつかみやすくなります。
- 1年間の取引履歴(購入・売却・交換など)を取引所からダウンロードして集める
- 同じ通貨ごとに、年間の取得金額と取得数量を合計する
- 総平均法の式で平均単価を計算する
- 売却した数量に平均単価を掛けて取得原価を求め、売却額との差で損益を出す
- 年間の損益を集計し、必要に応じて申告内容に反映する
暗号資産同士の交換や、買い物に使った場合なども損益計算の対象になることがあるため、取引履歴は早めに整理しておくことが落ち着いた申告につながります。日頃から記録を残しておけば、年末の集計がぐっと楽になります。
まとめ
総平均法は、1年間に取得した暗号資産の取得価額の合計を取得数量の合計で割り、平均単価を求めるシンプルな計算方法です。計算の手間が少なく、個人で届出をしなければ自動的に適用されるため、多くの人にとって身近な存在といえます。一方で、期中の損益が見えにくい、年をまたぐと前年の単価を引き継ぐといった特徴もあるため、移動平均法との違いを理解したうえで、自分の取引スタイルに合った方法を選ぶことが大切です。評価方法は一度選ぶと変更しにくいため、最初の判断は落ち着いて行いましょう。
暗号資産の総平均法とは?計算の流れと移動平均法との違い5つのポイントをまとめました
総平均法は「年間でまとめて平均する」計算方法で、シンプルさと届出不要(自動適用)という点が魅力です。移動平均法は取引のたびに単価を更新するため損益を把握しやすく、それぞれに向き不向きがあります。計算がシンプルなのは総平均法、損益の実感を重視するなら移動平均法、というのが選び方の基本軸です。届出や変更の手続き、雑所得としての扱いといった基礎を押さえつつ、不安があれば損益計算ツールや専門家を上手に頼りながら、自分に合った形で無理なく準備を進めていきましょう。なお、本記事の制度に関する内容は2026年6月時点で整理した一般的な情報です。



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